■見分けのチェックポイント
羽化殻全長30mm程度.肢が非常に長いが,爪はあまり長くなく,中肢でふ節第3節長より明らかに短い.腹部背面の正中線は稜状で「明瞭な」背棘が第2−9腹節に連なる.背棘に関しては,石田(1997)では第2−10腹節(種の解説文中の3−10腹節はおそらく誤り),杉村ら(1999)では第2−9腹節と記述が異なっている.筆者の観察では,第10腹節には稜状の盛り上がりがあることを認めているので,これを背棘と見れば第2−10腹節にあることになる.側棘は第8,9腹節にある.側刺毛は6本程度で基部に長い1本の刺毛(矢印)があり,これを含めると7本となる.腮刺毛は9−11本程度で,6本程度がまとまっているが他は少し離れる.肛上片,肛側片の先端部はだいたい同じ位置にくるが,尾毛はそれらよりやや短い.
■分布と類似種
北海道を除く,本州,四国,九州,屋久島までに分布する.伊豆大島,隠岐,対馬などにも産する.北海道には本種の亜種であるエゾコヤマトンボ M. a. masaco が分布する.また沖縄本島にはオキナワコヤマトンボ M. kubokaiya ,西表島にはタイワンコヤマトンボ M. clio が分布しているが,コヤマトンボを含めたこれらは分布域が互いに重ならず,同定に関しては実際上の問題はない.
■生態
河川のかなり上流から中流域に至るまでに生息する.上流域では底に堆積する落ち葉を,中流域ではツルヨシの根際,砂地,植物性沈積物などをすくうとよく採れる.肛門から水をふきだして活発に泳ぐのを観察したことはなく,肢で水をかくようにして泳ぐ.またキイロヤマトンボのように腹部を左右に揺すって砂に潜り込むような動作も観察していない.