石田(1996)の言う種群1(コヤマトンボを中心としたグループ),種群2(キイロヤマトンボを中心としたグループ)の区別は明瞭で,杉村ら(1999)のふ節の爪の長さ,及び下唇前基節の幅と長さの比較で,まず間違いなく分けることができる.
しかし種群1の各種は,互いに区別が困難である.石田(1996)はコヤマトンボとタイワンコヤマトンボを分けるのに下唇腮刺毛の長毛の数(コヤマトンボは6本,タイワンコヤマトンボは7本)を用いているが,私の手元の標本ではいずれも6本になっている(コヤマトンボ及びタイワンコヤマトンボの各ページの「側刺毛と腮刺毛図」を参照).Matsuki & Lien (1982)では,同じくこの2種について,第8腹節の背棘の形状が異なることを指摘している.またタイワンコヤマトンボでは,時に背棘が第3−9腹節にしかない場合があるとの記述がある.
石田(1996)はコヤマトンボ属種群1すべてに第10腹節に背棘があるとしている.手元の標本では,第10腹節の背棘に似た隆起・突起は,コヤマトンボにおいて一番発達が悪く背棘と見なせないようなものだが,検討標本数が少なく確実なことは言えない.これ以外の第10腹節のものは背棘と見ることができるものである.
結局のところ,安定した区別点がないと思われたため,種群1については,現時点では分布域で区別するより方法がなかった.
しかし種群1の各種は,互いに区別が困難である.石田(1996)はコヤマトンボとタイワンコヤマトンボを分けるのに下唇腮刺毛の長毛の数(コヤマトンボは6本,タイワンコヤマトンボは7本)を用いているが,私の手元の標本ではいずれも6本になっている(コヤマトンボ及びタイワンコヤマトンボの各ページの「側刺毛と腮刺毛図」を参照).Matsuki & Lien (1982)では,同じくこの2種について,第8腹節の背棘の形状が異なることを指摘している.またタイワンコヤマトンボでは,時に背棘が第3−9腹節にしかない場合があるとの記述がある.
石田(1996)はコヤマトンボ属種群1すべてに第10腹節に背棘があるとしている.手元の標本では,第10腹節の背棘に似た隆起・突起は,コヤマトンボにおいて一番発達が悪く背棘と見なせないようなものだが,検討標本数が少なく確実なことは言えない.これ以外の第10腹節のものは背棘と見ることができるものである.
結局のところ,安定した区別点がないと思われたため,種群1については,現時点では分布域で区別するより方法がなかった.
01.下唇前基節の長さがその最大幅より明らかに長い(b).中肢のふ節の爪の長さは,その第3節の長さとほぼ等しい(a).・・・02
− 下唇前基節の長さとその最大幅はほぼ同じ程度である(d).中肢のふ節の爪の長さは,その第3節の長さより明らかに短い(c).・・・03
a.キイロヤマトンボ,b.ヒナヤマトンボ,c.オキナワコヤマトンボ,d.コヤマトンボ.
02.後胸後腹板(mps)に棘状突起(矢印)がある(a).羽化殻全長は30mm近くある.本州,四国,九州に分布する.・・・キイロヤマトンボ
− 後胸後腹板(mps)に棘状突起がない(b).羽化殻全長は20mm程度.石垣島と西表島に分布する.・・・ヒナヤマトンボ
a.キイロヤマトンボ,b.ヒナヤマトンボ.(I,II,IIIは腹節の番号,mps:後胸後腹板)
03.頭部前縁の突起が小さい(a),腹部第10節の背棘は比較的明瞭に認められる.沖縄本島にのみ分布する.・・・オキナワコヤマトンボ
− 頭部前縁の突起は大きい(b).・・・04
var.実際のところ差違は微妙であって,形態的特徴だけからでは間違う可能性が十分にある.分布域がもっとも有力な手がかりである.
a.オキナワコヤマトンボ,b.コヤマトンボ.
a.オキナワコヤマトンボ,b.コヤマトンボ.
04.西表島のみに分布する.時に背棘が第3−9腹節にしかない場合がある(Matsuki & Lien, 1982).・・・タイワンコヤマトンボ
− 西表島には分布しない.・・・05
05.北海道に分布する.・・・エゾコヤマトンボ
− 北海道に分布しないで,本州,四国,九州,屋久島にまで分布する.・・・コヤマトンボ
var.オキナワコヤマトンボがかろうじて識別できるが,他のコヤマトンボ,エゾコヤマトンボ,タイワンコヤマトンボは分布域によるしか方法はないであろう.