■見分けのチェックポイント
羽化殻全長30mm程度.肢が非常に長く,爪も長く,中肢でふ節第3節長とほぼ同じ長さである.体全体が扁平である.写真の羽化殻は汚れていて見にくいが,体全体に,黄褐色の地に複雑な黒い斑紋がある.側棘は第8,9腹節にあり,背棘は第3−9腹節にある.基部に近い背棘はまっすぐ立ち上がってから鉤状に後方に曲がるが,末端部へ行くにつれ,高さが低くなり基部の幅も広くなって次第に稜状になっていく.前下唇はコヤマトンボに比べると縦長.側刺毛は5本で基部に小さな刺毛(矢印)があって,これを含めると6本になる.腮刺毛は8本前後で,7本がまとまっているが,1,2本はより中央部の離れた位置にある.肛上片,肛側片,尾毛のそれぞれの先端部はだいたい同じ位置にくる.
■分布と類似種
東北南部から本種中部以南以西に分布する.背側から見た体型や,体の斑紋はオオヤマトンボに似ているが,下唇側片の形状が全く異なるので,簡単に区別できる.またオオヤマトンボは池沼性の種であって河川には入り込まない.ヒナヤマトンボは体がうんと小さく,八重山諸島に生息し分布域が重ならない.
■生態
河川中流域の砂底に生息している.豊かな水量ときれいな水が生息に適している.多くの河川では,堰によって水が止められた所などに砂が堆積し生息地になっている.長い爪は粒の粗い砂底にアンカリングするのに都合よくできていて,6本の肢の爪を砂地にしっかり突き立てて体全体を固定してから,体を左右に振って胴体から砂地に埋まるようにして潜り込む(写真).