■見分けのチェックポイント
羽化殻全長が38mm前後あり,大型の幼虫で腹部も分厚い.体全体が淡褐色の地に黒い斑紋が広がる.肢は長く爪も長い.明瞭な側棘が第8,9腹節に存在する.明瞭な背棘が第3−9腹節にあり,基部に近い腹節のものは鉤状に後方に曲がり,末端に行くに従って高さが低くなり前後の幅が広くなって稜状を呈するようになる.前下唇,特に下唇側片は図のように特異な形状で,左右非対称の牙状の突起がそれぞれ6個ずつあり,側刺毛も腮刺毛もなく先端部には可動鉤がある.日本産のトンボ目では類似の形態のものはいない.後頭角に顕著な突起がある(矢印).
■分布と類似種
北海道から西表島まで全国に広く分布するが,南西諸島に分布が広がったのが確認されたのは1967年,石垣島からである(石田,1967).それ以後各島々に分布が広がったといわれる.体の斑紋と全体的な印象からは,キイロヤマトンボが似ているが,腹部は平板で薄く,また肢もより長い.またキイロヤマトンボは河川性の種であって池沼に入ることはない.
■生態
琵琶湖のような大湖から直径20mにも満たない小さな池まで,非常に幅広い止水環境に生息している.小さな池では粘土質の「かけあがり」部の泥をすくったときによく採集される.浅い池では,平らな粘土質の底をかき回すと採集されることが多い.底には落ち葉の沈積物もなく,水生植物も生えていないことが多く,そういった部分にうずくまっているものと推察される.