■見分けのチェックポイント
羽化殻全長36mm前後.腹部第5節の幅より第6節の幅の方が明らかに狭い.腹部第9節の最大幅に対する正中線の長さがキイロサナエより短く,他のアジアサナエ属と似ている.触角第3節はやや平たい棒状をしている.前肢・中肢脛節先端の突起は長く明瞭である.松木・斉藤(1996)は千葉県産の羽化殻を用いて詳細な観察を行っている.それによると,背棘は腹部第8,9節または第9節だけにあること,側棘は腹部第6節から第9節または第7節から第9節にあること,が記載されている.またメスにおいては,原産卵弁が短く,第8腹節側棘より短いとしている.
■分布と類似種
本州,四国,九州に分布する.隠岐や甑列島にも分布する.キイロサナエと分布域が重なっており,その区別が難しい.慣れてくれば,第9腹節の幅と長さの比で,多くの場合見分けられるようになる.メスの場合は,ヤマサナエの原産卵弁が短いこと,そしてそれが腹部第8節の側棘より短いことで区別できる(松木・斉藤,1996).側棘や背棘配置を用いる場合は,その変異に注意する必要がある.
■生態
河川上流から中流域にかけて生息する.湿地の細流に入りこむことも多い.かなり細かい砂や泥の堆積している部分に潜り込んで生活している.羽化は4月下旬から5月下旬にかけて行われ,石の上や水際の地面に羽化殻が残されている.