トップ写真の解説
コサナエの産卵は,「飛びながら暴れまわる」という表現がぴったりです.停止飛翔産卵とかいうような生易しい動きではありません.あっちへ行ったと思ったらこっちへと,とにかくじっとしていないのです.でも時々停止飛翔状態になることもありますので,そのすきをねらって写真を撮ることになります.また,産卵中よく止まります.さらに産卵中に突然摂食行動に出たりもします.処女飛行に飛び立ったオオイトトンボをぱくりと食った産卵メスもいました.このメスは産卵をやめて樹林の中の方に飛んで行きました.産卵は途中で止められるんですね.ということは,こちらが撮影で脅かしたりすると産卵をいったん止めていることもあるのかもしれません.やたらに短時間の産卵個体もありますので,これは産卵を中断した個体の再産卵かもしれません.
メスの停止飛翔とはいえない空中産卵.2016.5.5.
成虫
兵庫県北部の平地では4月下旬から,山間部では5月上旬ころに羽化し,遅い個体は7月に入っても見られます.羽化した個体は一気に近くの樹林へ飛び去り,かなり高い位置の葉上に静止します.たまたま近くに止まった羽化個体もかなり敏感で,ちょっとしたこちらの動きを察知して,遠くへ飛び去ってしまいます.鳥にねらわれやすいこの時期の行動としては適応的でしょう.平地では早ければ5月上旬には産卵活動が見られます.7月には姿を消します.
オスの静止.2015.5.17.
幼虫
コサナエは,フタスジサナエなどとよく似ていますが,腹部第10節の長さが,コサナエ属の中では,タベサナエに次いで短いです.兵庫県においては,フタスジサナエやオグマサナエと分布がほとんど重なっていないので,あまり同定上の問題になることはありません.兵庫県北部はだいたいコサナエと思って間違いありません.幼虫期間はおそらく2年です.
スタジオ写真.2011.10.29.