トップ写真の解説
ニホンカワトンボは朽木に産卵するのが普通です.しかし写真の個体は,生きた植物の葉に産卵をしています.次の日,この産卵基質を調べてみましたが,植物はコケの一種のようで,裏側は土のかたまりでした.葉を貫いて土中産卵になっているかもしれませんが,朽木でないことだけは確かです.
橙色翅型メスの,柔らかい生きた植物組織へのダブル産卵.2018.5.16.
成虫
4月の中旬に羽化し,いったん川から少し離れます.5月の上−中旬になると川面に多数が集り,生殖活動を行います.その後6月まで成虫が見られます.ニホンカワトンボの産卵はツルヨシの茎や朽木などに行われますが,産卵しているメスは意外と目にすることがありません.アサヒナカワトンボと同様,春にトンボのいそうな川に入ると,オスもメスもどこにでも止まっています.しかし産卵を目にすることがなかなかないのです.その理由は,多くの産卵メスが非常に敏感で,水の揺らぎや人影の動きなどに反応して産卵をやめ,飛び上がってしまうからなのです.
成虫には翅の色彩が異なるいくつかの型があります.詳しくは成虫標本のページをご覧ください.兵庫県には5つの型すべてが生息しています.
成虫には翅の色彩が異なるいくつかの型があります.詳しくは成虫標本のページをご覧ください.兵庫県には5つの型すべてが生息しています.
橙色翅型のオス.2014.5.11.
幼虫
ニホンカワトンボの幼虫はツルヨシの根際などにしがみついて生活しています.アサヒナカワトンボの幼虫と似ていますが,やや大きめで,尾鰓の先端上縁の角が尖っていることで区別するのがふつうです.しかし再生した尾鰓の場合はここが円くなっている場合があります.兵庫県下では,産卵された春の卵は短期間で孵化し,幼虫はその年のうちに終齢にまで達し,そのまま越冬して翌春羽化します.ただ,日本の北の方,あるいは関東地方のとある地域の個体群では,幼虫の生活史が兵庫県とは違っていることが知られています.
スタジオ写真.2009.1.3.