トップ写真の解説
夏の日の午後,集団で産卵するハグロトンボに出会いました.これらのメスは1頭のオスに警護された集団のようで,ハーレムを形成していました.オスは他のオスが近づくとしきりにそれを追い払い,またメスが飛び立とうとするとそれを静止し,さらに新しいメスがやってくると交尾しようとしました.強いオスですが,翅が破れてボロボロになっているのが印象的でした.
ハグロトンボのグループ産卵.2009.8.8.
成虫
成虫はふつう6月上旬に出現するようで,夏を過ぎ,10月上旬までそのすがたを見ることができます.羽化した成虫はいったん付近の林の中にもぐりこみ,林床や林縁のうす暗いところで未熟期を過ごします.この時期にかなり移動する個体もあるようで,川から離れた場所で見つかることがあります.オスとメスはほぼ同じ場所で生活しています.オスは流畔のヨシの葉などに止まってまわりのようすをうかがっていますが,別のオスが近づくと,飛び立ってスクランブルをかけます.一定の距離まで追尾するとUターンして引き返します.メスが産卵にやってくるとそれを背中側から捕まえ,交尾をします.その後メスは産卵を行います.
暗い林内でのオスの静止.2010.8.9.
幼虫
ハグロトンボの幼虫は,アオハダトンボとほとんど変わらない形態をしています.翅芽の形が成虫の翅の形を反映していて,アオハダトンボがやや円みがあるのに対し,ハグロトンボの方が細長い形態をしています.メスの場合は,偽縁紋の位置の気管の曲がりから判別すると確実に区別できます.卵は2,3週間で孵化し,幼虫で越冬します.翌春には小型の幼虫が生息地でたくさん見つかり,5月上旬には終齢幼虫になっています.おそらく一年一化の生活史を送っていると思いますが,成虫が出ている期間にも小さな幼虫が見つかり,これが,その年の子孫か前年の子孫かがはっきりしません.
スタジオ写真.2011.5.5.