トップ写真の解説
メスが産卵していると,オスがやってきてその前に止まり,腹部先端を反らして白色部を誇示しました.観察していた限りでは,このオスとメスは特に交尾したカップルというわけではなさそうでした.交尾前であればメスを誘っていると考えられますが,産卵しているメスに対してこういうディスプレイを行う意味が分かりません.この行為にメスがなびくときでもあるのでしょうか.このオスはしばらくすると飛び去って行き,メスは単独で産卵を続けました.そして最終的には完全に潜水して産卵を継続しました.
産卵しているメスに対し腹部先端腹面を誇示するオス.2010.8.4.
成虫
ミヤマカワトンボは夏のカワトンボという印象が強いのですが,5月にはもう成虫が川面を飛んでいます.おそらく,5月の上旬には羽化しているのでしょう.9月上旬にはほぼ姿を消すようで,姿をあまり見かけなくなります.産卵は,流れに転がっている流木や倒木などに行い,潜水することがふつうのようです.そのとき,オスがその上空をせわしなく飛び回る光景がしばしば観察されます.
オスの静止.2010.6.12.
幼虫
ミヤマカワトンボの幼虫は意外と採集しにくいのです.石がごろごろしたような川に成虫が飛んでいるのですが,そういったところへ出かけていっても,どこをすくっていいか見当がつきません.流畔に植物が生えていればその根際などをすくえば採れることがありますし,真冬には底の落ち葉の中に潜り込んでいます.本種は,他のアオハダトンボ属幼虫と比べて,脚を伸ばしたときにより平たい姿勢になるように思えます.これは植物につかまるというより落ち葉の隙間に潜り込むのに適している形質です.幼虫で越冬し,4月下旬には今にも羽化しそうな個体が採れます.
スタジオ写真.2008.3.28.