H010. ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata
<特ちょう>
ハグロトンボはカワトンボ型の幼虫です.体全体が固い感じです.
尾さいは長く,腹部の長さの半分以上あります(写真3上).
尾さいは固く,両側の
尾さい(
側さい)はぶ厚く,中央の
尾さい(
中央さい)はうすく板のようです.
触角(しょっかく)は第1節がとても長くなっています(写真2上).
<よく似た幼虫との区別>
ハグロトンボは,
ミヤマカワトンボや
アオハダトンボと,とてもよく似ています.このうち,
ミヤマカワトンボとは,体の大きさや,触角の第1節の長さで区別できます.写真3のように,
ミヤマカワトンボの
終齢幼虫は,尾さいをふくめた全長が60mmほどもありますが,ハグロトンボは43mmほどです.また写真2のように,
ミヤマカワトンボの触角の第1節は,ハグロトンボより明らかに長いです.
アオハダトンボとの区別は,とても難しいです.ほとんど区別ができないといってもよいでしょう.ただ,
終齢幼虫のメスについては,はっきりと区別する方法があります.
アオハダトンボのメスの翅芽にたくさんのスジが走っていますが,その前のへりの先の方の部分が,少し曲がっているのです(写真2).ハグロトンボは曲がらず,まっすぐです.これは,
アオハダトンボのメスの翅(はね)に擬縁紋(ぎえんもん)とよばれる白い点があり,その部分のスジが曲がっていることから来ています(写真5下).オスについては,翅芽の形が少しちがうことで区別します.翅芽の後ろのへりが,まっすぐになっているように見えるのがハグロトンボ,ゆるくカーブしているのが
アオハダトンボです.これは,成虫の翅(はね)の形が少しちがうことから来ています.
<さがす場所のヒント>
ハグロトンボは川の住人です.兵庫県では,平地をゆったりと流れる川に住んでいます.写真6のように,メスは水の流れに生えているモや,植物の葉などに産卵します.ですから,植物のたくさん生えた川を好みます.成虫は,ふつう6月から川に現れます.産みつけられた卵はすぐにかえって幼虫になります.ハグロトンボは,冬前に
終齢幼虫になるものが少ないので,春早く
終齢幼虫になっているものは,
アオハダトンボの可能性が高いです.
写真4.川の流れに沈んでいるモに産卵する,ハグロトンボのメス.