トップ写真の解説
オオルリボシヤンマはそれほど珍しいトンボではありません.写真の池は樹林に囲まれた薄暗いところで,午後たくさんのメスたちが集まって産卵をしていました.オスは産卵しているメスのそばを興味深そうに飛んでいましたが,タンデムになることはありませんでした.メスは時々場所を変え,腰まで浸かったりして産卵していました.ここには腹部に緑色の斑紋を持つ個体も混じっていました.思い切り近づいてストロボを炊いても,全く動じようともせず産卵を続けていました.個体数が多いと,トンボの警戒心は小さくなるようです.
植物組織内産卵.2010.8.23.
成虫
兵庫県では,成虫は7月下旬頃から出現し,11月まで見られます.8月下旬には,山間の植生豊かな池で,オスのパトロール飛翔や,メスの産卵活動が見られます.産卵はふつう水面上または水面下の植物組織内になされますが,時に土中や朽木への産卵も見られます.オスは産卵に来たメスの後を執拗に追尾しますが,連結に成功した例はほとんど見たことがありません.オス1頭しか縄張りがとれないような小さな池の場合,縄張りを占有している個体の次の順位と思われるオスが近くの樹林の上を巡回飛行しており,縄張りオスを取り去るとそのオスが縄張りに入る行動が観察できます.兵庫県では,山間部で生活しているトンボと思われがちですが,意外と丘陵地の池でも観察できます.
オスのパトロール飛翔.2009.9.5.
幼虫
オオルリボシヤンマの幼虫は,泥が付いていたりすると,ヤブヤンマやルリボシヤンマと紛らわしいのですが,泥を落として観察すると,肛錘が長く,頭部の側縁に淡色のラインが入るので区別はしやすいです.ヤブヤンマとは,下唇側片の幅や,原産卵管の長さもかなり異なっていますので,ていねいに調べれば間違えることはありません.この写真は,標高100mあまりの丘陵地にある池で採集したものです.初秋に産み付けられた卵は,おそらくそのまま秋・冬を越し,翌春孵化,幼虫のまま少なくとも1回以上冬を越して,初夏に羽化するような生活史を送っています.
スタジオ写真.2011.7.2.