新 トンボ歳時記
No.393. 神戸ブランドのオオルリボシヤンマ 2012.9.2.

最近地元神戸市の観察にあまり出かけていません.神戸市内は,車の規制が多くなってきて,生息地へのアプローチに時間がかかったり,駐車料なるものを徴収されたりと,そこにいるトンボの種類を秤にかけると,かける時間やお金が割に合わないと感じることが多くなりました.が,今日は,駐車料がかかる六甲山地へ,オオルリボシヤンマを見に行くことにしました.

オオルリボシヤンマの産卵は昼前後ですので,朝のうち,近くの森林公園へ行ってみました.中にある人工池はハスが密生していてとてもトンボが飛ぶ状態ではありませんでした.少し歩いてみますと,谷筋の上をミルンヤンマのメスが摂食飛翔しているのを見つけました.非常に敏捷に,やや高いところを往復して飛び回っていました.

次に今年手こずっているコシボソヤンマの生息地へと足を伸ばしました.でも午前中ですから,コシボソヤンマの姿は全くありません.まあ当然ですね.ということで,時間もちょうどよくなったのでオオルリボシヤンマの観察に出かけました.

駐車料金を500円支払って車を止め,そこから歩いて観察地まで10分ほど... 到着したときトンボの姿が全くありませんでした.これだから市内の調査はいやだ,駐車料金払って,トンボがいないなんて,... と思いながら池のまわりを数歩歩いたときでした,一斉に4頭ほどのオオルリボシヤンマのメスが浮上しました.ここはヒメコウホネが密に植えられているのですが,ヒメコウホネの海から,まさに浮上したという感じでした.オオルリボシヤンマがいたことにほっとし,産卵を再開したメスをさがしてみますと,ヒメコウホネの「林」の中にもぐりこんで産卵をしています.珍しいことに(と私は思っていますが),メスはヒメコウホネの茎の,水面よりかなり高い位置に産卵をしていました.

そっと近づこうとしますが,ここのオオルリボシヤンマは非常に神経質で,人影が動いただけで,さっと飛び立って,産卵をやめてしまいます.そしてしばらくすると,次の止まり場所を求めて,ヒメコウホネの中にもぐりこんでホバリングをし,そして止まって産卵を再開します.

最初のうちどうしても近づくことができませんでしたので,こうなったら,待ちかまえ作戦で行くことにしました.幸いこの中の1頭のメスは,中央部のヒメコウホネの「海」よりは,岸近くのまばらなところを好んで産卵してくれるので,こいつに的を絞って,じっと待つことにしました.ほどなくすると,ファインダーいっぱいに入る距離で産卵をしてくれました.

ここのメス達は,ヒメコウホネの茎に止まって,上から順に下に向かって移動しながら,卵を産みつけていきます.止まっている格好は,ムカシトンボを彷彿とさせます.ムカシトンボは逆に,上へ上へと移動しながら産卵をしますけれども... また,茎に限らず,葉の上に止まっても産卵しています.

上空を飛んでいたオスが,池の上に舞い降りてきて,なわばり飛翔を始めました.オスはメスを見つけると,すぐ後をストーカーのように追いかけますが,交尾に至ることはほとんどありません.ある程度追いかけると,諦めてしまうことが多いのです.

このオスが追いかけているメスをよく見ますと,緑色型です.神戸市内ではほとんどが青色型のメスで,緑色型は珍しいのです.これを記録することにし,執拗にこの個体を追いかけました.オオルリボシヤンマの方は相変わらず敏感で,警戒心をゆるめることはありません.このメスにも,なかなか近づくことができませんでした.このメスは,アサザの葉に止まって産卵をしたり,朽ち木に産卵をしたりと,よく見るオオルリボシヤンマの産卵姿勢を見せてくれたので,妙に安心してしまいました.

久しぶりに神戸市内でオオルリボシヤンマの観察が行えて,やはり地元は近くでいいなと思ったのでした.特に緑色型のメスは,これを見るためにわざわざ兵庫北部に行ったりするので,とてもラッキーでした.さて,まだ時間はお昼ころ.この後の予定がなかったので,六甲山地の東の方へミヤマアカネを見に行くことにしました.


ここもまた駐車料金が必要です.オオルリボシヤンマに500円払った上に,ミヤマアカネでも駐車料金がいる,... 観光地なんかはこれだからいやですね.

ミヤマアカネはすぐに見つかりました.まだ未熟な感じでした.オスは,メスと同じ黄褐色の個体から,腹部や縁紋が赤くなり始めている個体までさまざまなものがいました.ただし,胸部まで赤いものは見つかりませんでした.数としては,黄褐色の「完全な未熟個体?」が一番多くいました.

この状態では,まだ繁殖活動開始まで半月はかかるでしょうね.そのときまでお預けということで,ここを後にしました.帰りにもう一度コシボソヤンマを見に行くつもりでしたが,六甲山は突然の大雨.それでも覗いてだけは見ました.もちろん何もいませんでした.ということで,今日は久しぶりに地元でトンボを観察しました.移動時間が短いので体はとても楽でした.