トンボノート
No.753. ミヤマアカネの観察.2020.9.27.

今日はミヤマアカネの観察に出かけてきました.ちょっと時期的に遅くなった感がありますが,まだまだいるという予想です.しかし,今年,例年の産地のミヤマアカネの個体数が大きく減少していました.時期が遅かったためか,夏の暑さがきつく消耗が早かったからか,はたまた曇りで風が強いせいか,理由は分かりませんが,見渡す範囲にせいぜい10頭ほどがいるだけです.いつもならあちこちでふわふわ飛び出すトンボなのですが…

▲ミヤマアカネのタンデムペア.

それでもタンデムのペアは七つ八つは見かけました.今日はビデオでの記録が目的です.しかし観察時期が遅かったことが裏目に出ました.川に繁茂しているツルヨシの背が高くなり,流れを完全に覆っていて,産卵するペアがまったく外から見えないのです.写真なら一瞬のチャンスで何とかできますが,ビデオではダメでした.仕方なく,ツルヨシの生えていない少し開けた,産卵に来そうなところで待っていました.

▲ミヤマアカネの交尾.気温が16℃で涼しいせいか,交尾時間が長かった.

産卵に飛び回るペアは,この場所にときどきはやって来るのですが,すぐにツルヨシで覆われた流れの速い場所へ潜り込んでいきます.どうも,この場所はあまり気に入られていないようです.それでも短時間やって来たところを撮影したビデオを見ていると,なんと,打水した場所に,オイカワらしき稚魚が群れ集まってくるのです.その動きから見ると,どうやら放卵され水中に落ちた卵をぱくぱく食べているみたいなのです.卵を魚が食べるという話はよく聞きますが,本当に食べるのは初めて見ました.

打水産卵するトンボはあちこち動きまわって打水する傾向があります.その理由は,ほとんど同じ場所で連続して打水していると,そこに魚が集まってきて,餌場になってしまうからなのかも知れません.そうだとすると,動きまわって打水する行動が進化してきたと考えることができます.同じ打水産卵でも,ヨツボシトンボなどはあまり動かないで打水することがありますが,飛水産卵によって前方に卵を飛ばしますので打水場所には卵は落ちません.

この考え方が正しいかどうかは分かりませんが,トンボの産卵を見ていると,本当にトンボたちの知恵が見えてくるようで,興味が尽きません.短い時間の観察でしたが,ちょっと刺激されました.