今日はホソミオツネントンボの観察を中心に,兵庫の北部へトンボのようすを見に行ってきました.昨年は,もうこの時期には,コサナエやホンサナエなどが活動を始めていました.今年はどうでしょう.結論から言うと,まだ早すぎる感じでした.コサナエがまだ羽化していたり,オオイトトンボがどんどん羽化していたり,池には,ホソミオツネントンボ以外には,同じく成虫越冬種のホソミイトトンボとヨツボシトンボがいただけでした.まずはコサナエのようすから…
コサナエは,ごらんのようにまだ未熟な状態でした.ただ,産卵に一度だけメスが入りました.9:15のことです.成熟が完了している個体もいないわけではないようです.しかしオスもまだ池に現れていなくて,繁殖活動はまだこれからという感じでした. 10:30少し前,暑くなってきたころ,1頭だけオスが入ってきましたが,すぐに姿を消しました.
池にはヨツボシトンボのオスが3頭,往ったり来たりしながら飛んでいました.ホソミオツネントンボの写真を撮っていたときに,メスが産卵に入りました.ヨツボシトンボの動きは素早いので,なかなか写真に撮れませんが,2枚ほど使えそうなのがありました.
この池の不均翅亜目のトンボは,以上2種だけでした.あとは均翅亜目のトンボたちばかりです.いろいろと観察していますが,これらは全部,ホソミオツネントンボの観察の合間に記録したものです.今日はコサナエがまだ繁殖活動のかかりで,池に出てきていませんので,早々にホソミオツネントンボの観察に切り替えていました.ホソミオツネントンボは到着した9:05ころからすでに産卵をしていましたが,11:00くらいから,特にメスの個体数が増え始め,交尾・産卵があちこちで行われるようになりました.
均翅亜目のトンボは,オスの尾部付属器でメスの前胸をつかんでタンデム状態になります.ホソミオツネントンボの尾部上付属器はクワガタの顎のような形をしています.これで前胸をわしづかみにし,下付属器でそれがずれないようにアンカーをかけています.
メスを見つけられなかったオスたちは,あちこち飛び回って,産卵中のペアに干渉したり,オス同士で追いかけ合いをしたりしています.たくさん個体数がいるので,もうあちこちでやっています.ホソミオツネントンボは止まったとき,腹部を2,3回上下に動かす動作をします.これが何を意味するのかは分かりません.同様の動きはオツネントンボもやっています.
11:30くらいになると,やたらと交尾態が目立つようになりました.10組以上が交尾しているのです.メスが出てきてオスがどんどん捕まえているんだな,と初めのうちは思っていました.しかし,産卵のビデオを撮っていて気づいたのですが,ホソミオツネントンボは,産卵を途中で止めて交尾するのです.産卵を止めてだらんとメスをぶら下げ,しばらくすると,交尾をします.精子置換の考え方からすると,産卵の前に交尾するのが論理的でしょう.いや,これは多分しているのだと思います.そして産卵を止めて再交尾もするようです.均翅亜目のように接触警護をしているトンボがこんなことをする理由がよく分かりません.精子置換をしているのでなければ,ひょっとしてメスの体内の精子がなくなったことをオスに知らせる何かシステムがあって再交尾するのかも知れませんが,これはやはりちょっと強引すぎる推論ですね.
さて,12:00を過ぎても,いっこうに繁殖活動は収まりを見せません.最後に,まだ褐色の状態のメスとタンデムになっているペアを紹介して,ホソミオツネントンボとはお別れしましょう.ホソミオツネントンボについては,「兵庫県とその近隣のトンボたち」でビデオを公開しています.
ホソミオツネントンボの観察を終えましたので,この後は,それ以外のトンボの状況を調べに,あちこちを探索しました.まずは,ホソミイトトンボ.これは探索というより,ホソミオツネントンボの観察中に,ちょっと記録したものです.
流れのある方に移動してみました.カワトンボが成熟して飛んでいるはずです.まず見つけたのは,ニホンカワトンボ.メスが産卵をしており,それをオスが警護していました.アサヒナカワトンボもいましたが,個体数も少なく,産卵は観察できませんでした.
未熟なトンボを探しに林の中に入っていきますと,ハラビロトンボの羽化直後の個体がいました.また,ヤマサナエの未熟なオスが目の前を通り過ぎ止まりました.オオイトトンボの羽化個体がアメンボに襲われていました.いろいろと出てきてはいるようですね.
これら以外には,シオヤトンボの未熟・成熟個体,シオカラトンボの未熟個体などを見かけました.せっせと活動しているのはシオヤトンボと成虫越冬種だけという,まだ春が始まったばかりの状態でした.本格的に春のトンボがわんさか活動するのはあと1週間くらいかかりそうに思います.