トンボノート
No.679. やっと春らしくなってきました.2019.5.2.

いやはや,なりもの入りで始まった10連休ですが,昨日までの天気はとてもトンボ観察ができるような状態ではありませんでした.寒いし,雨は降るし,風は強いし.その間撮りためていたトンボのビデオ編集をしていました.今日は,朝から青空と太陽.布団をかぶっているのも暑いくらいで目が覚め,早々にトンボの状況を見に出かけました.今日はコサナエ属の産卵が始まっているか,トラフトンボはいるか,そしてオツネントンボのビデオ撮影です.

まずは第一地点.ここは例年たくさんのコサナエ属が見られるのですが今年は本当に姿がありません.遅いのか,羽化数が少なかったのか.多分後者です.池で羽化殻を見ることがほとんどありませんでした.ここには,まだ未熟なタベサナエがいました.

▲春一番のタベサナエ,まだオスが未熟状態である.少ないというより遅いというのが正解なのか…

ということで,ここでは産卵などとてもないだろうということで,第二地点へ行きました.この地点番号は4月28日と同じです.池のそばを歩くと成熟したフタスジサナエが飛び回っていました.こちらはもう繁殖期に入っているようです.

▲池の畔でメスを待っていると思われるフタスジサナエのオス.
▲フタスジサナエはあちこちに止まっていた.今年は第二地点が観察には正解のようだ.

さて,もう少し歩いて,水を張った水田を見に行きました.先日シオヤトンボが産卵していたところです.畦道に生えた草に,フタスジサナエが止まっています.ざっと見ただけで5,6頭はいるようです.少し向こうでメスが産卵しているのが見えました,とその途端,近くのオスがそれを見つけてお持ち帰りしました.産卵が始まっていることは確かなようです.ということで,ここで待つことにしました.

▲水を張った水田の畦にはいた草に止まるフタスジサナエのオス.

10分も経たないうちでした.足下に産卵個体がはいりました.ついています,オスのそばでなく私のそばに来たのですから.これは私が,お持ち帰りではありませんが,写真にいただきです.私は撮影のために動いていますので,他のオスはあまり近ずこうとしません.ゆっくりと記録が撮れました.撮った後で気づいたのですが,これ,フタスジサナエではなくタベサナエでした.







▲草の間で産卵を続けるタベサナエ.

いつもタベサナエを観察に行く池は木に覆われたところにあって,ストロボ撮影をするのですが,ここは完全に日が当たる場所.明るい写真が撮れました.この産卵の後,オスが同じ所にやって来ました.オス君後の祭りですよ.とはいうものの,オスはよく知っています,産卵ポイントを.

▲メスが産卵していたところにやってきたタベサナエのオス.

11時過ぎまで粘りましたが,後続がないので,というか,1頭だけお持ち帰りがありました.ここを後にし,先ほどフタスジサナエが飛んでいた池の方にいってみることにしました.途中,タベサナエのまだ未熟なメスがいました.産卵があったといっても,まだ始まったばかりなのでしょうね.シオヤトンボもたくさんいましたが,交尾態だけ紹介しておきましょう.

▲タベサナエの未熟なメス.産卵中のメスと比べると複眼がまだ白っぽい.
▲シオヤトンボの交尾.シオヤトンボはあちこちでたくさん繁殖活動をしていた.

フタスジサナエがいた池に戻りますと,なんと,フタスジサナエの三連結が見られました.オス−メス−オスという結合です.交尾中のペアに,先頭のオスが割り込んだのでしょう.コサナエ属はよく三連結が観察されます.

▲フタスジサナエの三連結.

写真の左下のオスが,最初に交尾していたオスのはずです.その複眼との連結部を外して,右上のオスがメスとつながったのでしょう.この三連結は程なく解消し,右上のオスがメスを連れて交尾をしました.精子置換の考え方からすれば,最初のオスの精子はほとんど受精に使われないでしょう.可哀想ですな.生存競争は厳しい.

上の三連結の,右上のオスとメスとの交尾.

さて,ここでしばらく観察をしていると,フタスジサナエが産卵に入りました.ここではビデオを回すことにしましたので,写真記録はありません.ご興味がある方は下記のビデオをどうぞ.ビデオは複数の日付のものを編集しています.後半の三連結以降が今日のフタスジサナエになっています.

12時過ぎまでここで観察し,この後はトラフトンボやオツネントンボを探しに,第四地点へ移動しました.現地に着いて池の畔に座ってオツネントンボを探していますと,ホソミイトトンボやクロイトトンボが産卵をしていました.オツネントンボもオスは飛びましたが,産卵は見られませんでした.

▲頭を水に浸けて産卵しているホソミイトトンボ.
▲クロイトトンボ.移精行動から交尾へ移行する途中の動きをとらえたもの.

ここに来たときから,トラフトンボのオスが1頭だけ岸に沿って水面を飛んでいました.まだ数は少ないですが,飛んでいるだけでもなんかほっとしました.今年もトラフトンボはこの池にやって来ているようです.これから数が増えればいいですが.

▲水面を飛んでパトロールするトラフトンボのオス

しばらく待って,そろそろ帰ろうかと思ったときでした.このパターン非常に多いですが,トラフトンボの交尾態が,水面を飛び始めました.数が少ないのにとてもラッキーです.去年は近くで卵塊づくりが観察できなかったので,今年はこのワンチャンスをなんとかモノにしたいと,池岸を走って交尾ペアを追いかけました.





▲池を広く飛び回る交尾態のペア.

交尾態で飛び回るのは,産卵する場所を探している行動だと私は考えています.トラフトンボの卵はカエルの卵のように紐状に膨らんで,水面下の沈積物に絡まります.ですから,絡めることのできる水面下の沈積物の状態を,交尾態で確認していると考えています.このときとても広い範囲を飛びますので,追いかける方は,息をゼイゼイいわしながら走らねばなりません.

だんだんと池の隅のある地点に戻ってくる頻度が高くなり,やがてそこで,メスを放しました.メスは1回打水した後,交尾オスと,すぐそばを飛んでいたオスの2頭に追いかけられながら,岸辺の草の茎に止まりました.絶好の撮影可能場所でした.そっと近づきましたが,飛んで山の方に逃げました.ダメかと思いあきらめようとしたところ,止まった場所が分かりましたので,できるだけ近づいて撮影しました.

▲トラフトンボの卵塊形成.2年ぶりの観察である.

今年300mmのレンズ(DXフォーマットでは,35mm換算で約450mm)を買ったので,これが功を奏しました.今後トラフトンボが増えるかどうかはまだ分かりませんが,ワンチャンスをものにできてよかったです.

さて,連休後半,忙しくなりそうです.