H094. ウスバキトンボ Pantala flavescens
<特ちょう>
ウスバキトンボはトンボ型の幼虫です.
翅芽(しが)は左右に開かず,まっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.体はやわらかく,表面はすべすべした感じです.腹部の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にあります.いずれも太く長くはっきりとしています.背中のとげ(
背棘:はいきょく)は腹部の第2−4節に小さなものがあります.これは
翅芽の下にかくれていて,
翅芽をめくるようにしなければ見ることができません(写真2).腹部の第10節にも背中のとげがあると書かれた本もありますが,小さくほとんど分かりません.写真2のように,腹部第10節にある
肛上片(こうじょうへん)の先が細く長くのびています.
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写真2.第8,9節に太く長い側棘があります. 2−4節に小さな背棘があります.翅芽をめくらないと見えません. |
写真3.羽化が近くなったウスバキトンボ幼虫の全形図. |
<よく似た幼虫との区別>
腹の横のとげ(
側棘)が長いので,アカトンボのなかまとまちがえることがあります.アカトンボのなかまと区別するときは,腹部の先たん,第10節についている,
肛上片を見てください.アカトンボのなかまでは
肛上片がだいたい三角形をしていますが,ウスバキトンボでは,写真2のように,先が細長くのびています.
<さがす場所のヒント>
ウスバキトンボは池の住人です.ふしぎなことに,トンボがたくさん飛んでいるような,自然が豊かな池では,ほとんど幼虫が採れません.公園の池や,学校のプール,しょっちゅうかれてしまうような雨水でできる水たまりなど,ほかのトンボが少ない場所に幼虫がいることが多いのです.写真4は,雨がふらないと干上がってしまう水たまりに,卵を産みに来たオス・メスのペアです.幼虫はものすごく成長が速いことが知られていて,夏には1か月あまりで親になってしまいます.このトンボは南方のトンボで,兵庫県では冬をこせないので,冬に幼虫は採れません.春に南から海をこえて飛んできて,産卵します.その子どもが出てくるのが6月くらいで,それ以後,11月くらいまで幼虫を採ることができます.
写真4.産卵にやって来たオス・メスのペア.雨がふらないと干上がってしまうような水たまりに産卵します.