H045. ヒラサナエ Davidius moiwanus taruii
<特ちょう>
ヒラサナエはサナエトンボ型の幼虫です.
翅芽(しが)がまっすぐ後ろにのびず,少し左右に開いているのが特ちょうです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にありますが,ときどき第7節にもあります.背中のとげ(
背棘:はいきょく)はありません.触角(しょっかく)は平たく少しはばがあります.頭の後ろ角に小さな突起が出ています.
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写真2.腹部の第8,9節に側棘があり,背棘はありません. |
写真3.触角は平たく,翅芽は少し開き,頭の後ろ角に突起があります. |
<よくにた幼虫との区別>
ヒラサナエによくにた幼虫に,
ダビドサナエや
クロサナエがいます.しかし,写真3のように,ヒラサナエには,頭の後ろ角に突起があり,
ダビドサナエや
クロサナエにはそれがないので,わりあいかんたんに区別できます.ヒラサナエは,兵庫県では,北部の高い山の湿地に住んでいます.ふつうの川で見つけたヒラサナエににた幼虫は,まずヒラサナエではありません.
ダビドサナエか
クロサナエでしょう.また,池でとれる,
フタスジサナエなどの小さなサナエトンボの幼虫は,写真3のように
翅芽(しが)が少し左右に開くことはありません.まっすぐ後ろにのびています.
もう一つ,ヒラサナエといっしょによく採れ,まちがえやすい幼虫に,
ヒメクロサナエがいます.
ヒメクロサナエは,
翅芽(しが)が左右に開くことなく,まっすぐ後ろにのびていますので,区別できます.くわしくは
ヒメクロサナエのページを見てください.
<さがす場所のヒント>
ヒラサナエは湿地(しっち)の住人です.それも,すずしいところが好きで,兵庫県では北部の高い山の上にしか住んでいません.成虫のメスは,湿地に生えたフキやオタカラコウとよばれる大きな葉の植物の間にもぐりこんで,空中から卵をばらまきます.幼虫はそういうところの下に流れている水の中で,泥(どろ)にもぐりこんで生活しています.身近なふつうの池や川で幼虫をすくっても,とれることはありません.
写真5.湿地の大きな葉の植物(オタカラコウ)が生えている間に入って,空中から卵を産んでいるヒラサナエのメス.