トップ写真の解説
ヒラサナエの産卵は,他のダビドサナエ属と同様に,停止飛翔しながら卵を一粒ずつ落としていきます.写真にも,腹部先端のやや下後方に,オレンジ色の卵が落ちているのが見えます.昼下がり,オタカラコウの大きな葉の陰に隠れるように,少しずつ向きを変えながら産卵を続けていました.
オタカラコウの間で産卵するメス.2015.5.17.
成虫
ヒラサナエの羽化は結構早いです.標高の高いところの湿地で生息しているので,平均気温ベースで,平地よりは1,2週間は遅れているはずです.それにもかかわらず,例年こどもの日の5月5日には多数が羽化をすませてしまっており,未熟虫の摂食活動が盛んに行われています.私の観察地では,不思議なことにどの成虫も同じ程度の成熟度合いなのです.ボトルネックを経験し遺伝的に均一になっているのかも知れません.本種の未熟虫は羽化した場所から離れることはなく,繁殖場所で未熟な期間を過ごしています.モイワサナエの亜種ですが,兵庫県におけるその生態は原名亜種とはなかり異なるように感じます.弱々しい感じのするサナエトンボです.
アミメカゲロウを食べるオス.2015.6.13.
幼虫
ヒラサナエの幼虫は,流れの際の砂泥をすくうとよく採れます.ダビドサナエ属の他種とよく似ていますが,後頭角に突起があるのが特徴です.また兵庫県下で湿地に生息していダビドサナエ属は本種だけです.
スタジオ写真.2011.4.30.