H044. ダビドサナエ Davidius nanus
<特ちょう>
ダビドサナエはサナエトンボ型の幼虫です.
翅芽(しが)がまっすぐ後ろにのびず,少し左右に開いているのが特ちょうです.腹の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第7−9節にあります.背中のとげ(
背棘:はいきょく)はありません.
触角(しょっかく)は平たく少しはばがあります.
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写真2.腹部の第7−9節に側棘があり,背棘はありません. |
写真3.触角は平たくすこしはばがあり,翅芽は左右に少し開いています. |
<よくにた幼虫との区別>
ダビドサナエによくにた幼虫に,
クロサナエと
ヒラサナエがいます.まず
ヒラサナエは,兵庫県では北部にある高い山の湿地にしか住んでいませんので,兵庫県の中ほどや南の方の川で見つけた幼虫はたいてい
ヒラサナエではありません.また
ヒラサナエには,頭の後ろ角に突起があり,ダビドサナエにはそれがないので,わりあいかんたんに区別できます.
それに対して,
クロサナエとの区別は,トンボのことをよく知っている人でもまちがえるくらい,とてもむずかしいのです.ただ,オスの場合は,ルーペや顕微鏡(けんびきょう)を使って,腹部の第10節を見ることで区別できます.写真4のように,ダビドサナエは
肛上片(こうじょうへん)とよばれる腹部の先の三角形の部分に,まるいイボのようなものがついています.
クロサナエでは,このイボが,少し後ろにのびるような形になっています.
しかしメスには,このイボのようなものがありません.これ以外の区別点としては,
クロサナエでは,腹部の第9節の左右に,白っぽい色の部分を持つ個体が多いです.ダビドサナエには白っぽい部分ができることはありません.でも,この白っぽい部分を生じない
クロサナエもいますので,はっきりとした区別点にはなりません.説明は
クロサナエのページを見てください.さらに,腹の横のとげ(
側棘)が,
クロサナエでは先がするどく,ダビドサナエでは先がややまるくなっている,という区別点がありますが,これもなかなか判断が難しいです.
写真4.ダビドサナエとクロサナエの
肛上片の上にある,イボのようなものの形のちがい.
もう一つ,ダビドサナエといっしょによく採れ,まちがえやすい幼虫に,
ヒメクロサナエがいます.
ヒメクロサナエは,翅芽(しが)が左右に開くことなく,まっすぐ後ろにのびていますので,区別できます.くわしくは
ヒメクロサナエのページを見てください.
<さがす場所のヒント>
ダビドサナエは川の住人です.かなり上流のせまい流れから,中流のはばひろい流れの川にまで住んでいます.岸近くの砂地の中にもぐりこんで生活しています.あちこちにふつうにいて,川ではいちばんよくとれる幼虫です.写真5は,オスがメスがやって来るのを待って,川の石の上に止まっているところです.
写真5.川の石の上でメスを待つダビドサナエのオス.