兵庫県の幼虫ガイド
H044. ダビドサナエ Davidius nanus
ダビドサナエ終齢幼虫
写真1.ダビドサナエ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長20mm前後.2009.1.6.
<特ちょう>
 ダビドサナエはサナエトンボ型の幼虫です.翅芽(しが)がまっすぐ後ろにのびず,少し左右に開いているのが特ちょうです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第7−9節にあります.背中のとげ(背棘:はいきょく)はありません.触角(しょっかく)は平たく少しはばがあります.

ダビドサナエのそっきょくとはいきょく ダビドサナエとダビドサナエ
写真2.腹部の第7−9節に側棘があり,背棘はありません. 写真3.触角は平たくすこしはばがあり,翅芽は左右に少し開いています.


<よくにた幼虫との区別>
 ダビドサナエによくにた幼虫に,クロサナエヒラサナエがいます.まずヒラサナエは,兵庫県では北部にある高い山の湿地にしか住んでいませんので,兵庫県の中ほどや南の方の川で見つけた幼虫はたいていヒラサナエではありません.またヒラサナエには,頭の後ろ角に突起があり,ダビドサナエにはそれがないので,わりあいかんたんに区別できます.
 それに対して,クロサナエとの区別は,トンボのことをよく知っている人でもまちがえるくらい,とてもむずかしいのです.ただ,オスの場合は,ルーペや顕微鏡(けんびきょう)を使って,腹部の第10節を見ることで区別できます.写真4のように,ダビドサナエは肛上片(こうじょうへん)とよばれる腹部の先の三角形の部分に,まるいイボのようなものがついています.クロサナエでは,このイボが,少し後ろにのびるような形になっています.
 しかしメスには,このイボのようなものがありません.これ以外の区別点としては,クロサナエでは,腹部の第9節の左右に,白っぽい色の部分を持つ個体が多いです.ダビドサナエには白っぽい部分ができることはありません.でも,この白っぽい部分を生じないクロサナエもいますので,はっきりとした区別点にはなりません.説明はクロサナエのページを見てください.さらに,腹の横のとげ(側棘)が,クロサナエでは先がするどく,ダビドサナエでは先がややまるくなっている,という区別点がありますが,これもなかなか判断が難しいです.

ヤマサナエの産卵場所.
写真4.ダビドサナエとクロサナエの肛上片の上にある,イボのようなものの形のちがい.
 もう一つ,ダビドサナエといっしょによく採れ,まちがえやすい幼虫に,ヒメクロサナエがいます.ヒメクロサナエは,翅芽(しが)が左右に開くことなく,まっすぐ後ろにのびていますので,区別できます.くわしくはヒメクロサナエのページを見てください.


<さがす場所のヒント>
 ダビドサナエは川の住人です.かなり上流のせまい流れから,中流のはばひろい流れの川にまで住んでいます.岸近くの砂地の中にもぐりこんで生活しています.あちこちにふつうにいて,川ではいちばんよくとれる幼虫です.写真5は,オスがメスがやって来るのを待って,川の石の上に止まっているところです.

ダビドサナエの産卵場所.
写真5.川の石の上でメスを待つダビドサナエのオス.