兵庫県の幼虫ガイド
H018. ムスジイトトンボ Paracercion melanotum
ムスジイトトンボ終齢幼虫
写真1.ムスジイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長21mm前後.2010.5.15.
<特ちょう>
 ムスジイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.写真2上のように,腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽいはん点が1つずつありますが,うすくなっているものが多く,はっきりしません.尾さいの半分より先に,3つの茶色の大きなはん点がならんでいますが,これも,写真2下のように,うすいものが多いです.尾さいは半分よりやや先がはば広くなり,ふくらんでいるように見えます.尾さいの,枝分かれした細かいスジ(気管分枝:きかんぶんし)は,白や黒のまだら色になっています(写真3).

ムスジイトトンボの背面図と尾さい ムスジイトトンボのなかまの尾さい
写真2.セスジイトトンボの腹部背面と横からの全形図.
腹部横のはん点も,尾さいの大きなはん点も,あまりはっきりしない.
写真3.ムスジイトトンボのなかまの尾さい
 


<よく似た幼虫との区別>
 ムスジイトトンボは,クロイトトンボオオイトトンボセスジイトトンボの幼虫と,とてもよく似ています.ほとんど区別ができません.大きさ,体の模様,下唇の形や毛の数,どれをとってもほとんど同じです.ただ一つ,少しだけちがいが見られるのは,尾さいの形と模様です(写真3).ただ,尾さいはちぎれたり,ちぎれて再生したりすることがあって,形が変化することが多いので,注意が必要です.
 尾さいがいちばん細長いのは,オオイトトンボです.中央に茶色のスジが入るものが多いです.枝分かれした細かいスジは,あまりつまっていなくて,スジとスジの間があいています.ムスジイトトンボと同じように,茶色の大きなはん点が半分より先に出ることがありますが,うすいことが多いです.ムスジイトトンボは,尾さいのはばが,いちばん広く,とくに半分より先のほうが,少しふくらむ感じです.セスジイトトンボ尾さいは,クロイトトンボのなかまの中で,いちばんはばがせまく,長さも短いです.
 なお,クロイトトンボでは,腹部の横のはん点と尾さいの大きな褐色の斑点は,必ず見られ,ほかのクロイトトンボのなかまのものより,はっきりしています.しかし,結局,区別できないことが多いので,そのときは,クロイトトンボのなかま(クロイトトンボ属(ぞく))ということにしておくようにしましょう.


<さがす場所のヒント>
 ムスジイトトンボは池の住人です.海岸近くの池に見られることが多いですが,かなり内陸部の池でも見られます.かなり長いきょりを移動するトンボのようで,新しくつくられた池にとつぜん現れたりします.また同じ池でも,姿がしばらく見られなくなったりすることもあります.モなどの,水生植物が多くしげっている池が好みです.モがたくさんしげった池で,大発生することがあります.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,終齢幼虫を採るなら,4,5月が適しています.幼虫は,モの中にもぐりこんで生活しています.成虫は,写真4のように水にもぐって産卵をすることが多いです.

ムスジイトトンボの産卵場所.
写真4.水の中にもぐって産卵する,オス・メスのペア.