トップ写真の解説
この写真は,水草に植物内産卵をしているように見えますが,おそらく産卵はしていません.観察をしていると,この行動は短時間で終わり,すぐまた別の場所へ移動して同じことを行います.このペアは,こういう擬似産卵行動を5分ほど行った末に,潜水して本格的に産卵を開始しました.おそらくこれは産卵基質の確認行動で,潜水産卵に適しているかどうか,−−つまり潜水するのに適していることと産卵基質として適していることの両方を−−,調べているのだと思います.潜水すると決めた産卵基質に止まったときには,メスは移動することなく,オスを引っ張り込むようにして直ちに潜り始めます.ムスジイトトンボの基本的な産卵方式は,潜水産卵のようです.
産卵基質の確認行動?.2022.6.3.
成虫
ムスジイトトンボは,個体数の多い池では,春に一度たくさんの成虫が見られる時期がります.その後,数を減らしながらも夏から秋にかけて成虫がみられます.秋頃にもう一度数が増える時期があります.このことから,一年二化している可能性が高いと思われます.移動性があり,孤立した人工的な水辺環境にもよく現れるのですが,そこは一般的には海岸近くであることが多いようです.
交尾.2022.6.2.
幼虫
ムスジイトトンボは,他のクロイトトンボ属幼虫とよく似ています.尾鰓が他のクロイトトンボ属幼虫よりやや幅広く円い形に見えます.気管分枝もより根本よりから分枝し,一本一本が長く見えます.側稜の褐色斑は淡くなる傾向があります.しかし同じクロイトトンボ属 Paracercion の他種との判別はやはり困難といえます.幼虫で越冬しています.
スタジオ写真.2010.5.15.