H015. クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum
<特ちょう>
クロイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.写真2上のように,腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽいはん点が1つずつあるのが特ちょうです.写真2下のように,
尾さいは先がまるく,半分より先に,3つの茶色の大きなはん点がならんでいます.このはん点は,うすくなるときもありますが,クロイトトンボでは必ず見えます.
尾さいの,枝分かれした細かいスジ(気管分枝:きかんぶんし)は,白や黒のまだら色になっています(写真3).
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写真2.クロイトトンボの腹部背面と横からの全形図. 腹部横のはん点も,尾さいの大きなはん点は,はっきりしています. |
写真3.クロイトトンボのなかまの尾さい オオイトトンボには中央にスジ(中央分節(ぶんせつ))がある. |
<よく似た幼虫との区別>
クロイトトンボは,
セスジイトトンボ,
オオイトトンボ,
ムスジイトトンボの幼虫と,とてもよく似ています.ほとんど区別ができません.大きさ,体の模様,下唇の形や毛の数,どれをとってもほとんど同じです.ただ一つ,少しだけちがいが見られるのは,
尾さいの形と模様です(写真3).ただ,
尾さいはちぎれたり,ちぎれて再生したりすることがあって,形が変化することが多いので,注意が必要です.
尾さいがいちばん細長いのは,
オオイトトンボです.中央に茶色のスジが入るものが多いです.枝分かれした細かいスジは,あまりつまっていなくて,スジとスジの間があいています.クロイトトンボと同じように,茶色の大きなはん点が半分より先に出ることがありますが,うすいことが多いです.
ムスジイトトンボは,
尾さいのはばが,いちばん広く,とくに半分より先のほうが,少しふくらむ感じです.
セスジイトトンボの
尾さいは,クロイトトンボのなかまの中で,いちばんはばがせまく,長さも短いです.
なお,クロイトトンボでは,腹部の横のはん点と
尾さいの大きな褐色の斑点は,必ず見られ,ほかのクロイトトンボのなかまのものより,はっきりしています.しかし,結局,区別できないことが多いので,そのときは,クロイトトンボのなかま(クロイトトンボ属(ぞく))ということにしておくようにしましょう.
<さがす場所のヒント>
クロイトトンボは池の住人です.水生植物が多くしげっている池に見られます.平地の明るい池よりは,まわりに木が生えた,林の中などの池が好みです.成虫は4月から秋の初めにかけて現れます.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,
終齢幼虫を採るなら,3,4月が適しています.幼虫は,水生植物につかまったり,池の底につもった落ち葉の下などにもぐりこんで生活しています.
写真4.池で,水面にうかぶかれ枝に産卵している,オス・メスのペア.