兵庫県の幼虫ガイド
H015. クロイトトンボ Paracercion calamorum calamorum
クロイトトンボ終齢幼虫
写真1.クロイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長21mm前後.2009.4.26.
<特ちょう>
 クロイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.写真2上のように,腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽいはん点が1つずつあるのが特ちょうです.写真2下のように,尾さいは先がまるく,半分より先に,3つの茶色の大きなはん点がならんでいます.このはん点は,うすくなるときもありますが,クロイトトンボでは必ず見えます.尾さいの,枝分かれした細かいスジ(気管分枝:きかんぶんし)は,白や黒のまだら色になっています(写真3).

クロイトトンボの背面図と尾さい クロイトトンボのなかまの尾さい
写真2.クロイトトンボの腹部背面と横からの全形図.
腹部横のはん点も,尾さいの大きなはん点は,はっきりしています.
写真3.クロイトトンボのなかまの尾さい
オオイトトンボには中央にスジ(中央分節(ぶんせつ))がある.


<よく似た幼虫との区別>
 クロイトトンボは,セスジイトトンボオオイトトンボムスジイトトンボの幼虫と,とてもよく似ています.ほとんど区別ができません.大きさ,体の模様,下唇の形や毛の数,どれをとってもほとんど同じです.ただ一つ,少しだけちがいが見られるのは,尾さいの形と模様です(写真3).ただ,尾さいはちぎれたり,ちぎれて再生したりすることがあって,形が変化することが多いので,注意が必要です.
 尾さいがいちばん細長いのは,オオイトトンボです.中央に茶色のスジが入るものが多いです.枝分かれした細かいスジは,あまりつまっていなくて,スジとスジの間があいています.クロイトトンボと同じように,茶色の大きなはん点が半分より先に出ることがありますが,うすいことが多いです.ムスジイトトンボは,尾さいのはばが,いちばん広く,とくに半分より先のほうが,少しふくらむ感じです.セスジイトトンボ尾さいは,クロイトトンボのなかまの中で,いちばんはばがせまく,長さも短いです.
 なお,クロイトトンボでは,腹部の横のはん点と尾さいの大きな褐色の斑点は,必ず見られ,ほかのクロイトトンボのなかまのものより,はっきりしています.しかし,結局,区別できないことが多いので,そのときは,クロイトトンボのなかま(クロイトトンボ属(ぞく))ということにしておくようにしましょう.


<さがす場所のヒント>
 クロイトトンボは池の住人です.水生植物が多くしげっている池に見られます.平地の明るい池よりは,まわりに木が生えた,林の中などの池が好みです.成虫は4月から秋の初めにかけて現れます.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,終齢幼虫を採るなら,3,4月が適しています.幼虫は,水生植物につかまったり,池の底につもった落ち葉の下などにもぐりこんで生活しています.

クロイトトンボの産卵場所.
写真4.池で,水面にうかぶかれ枝に産卵している,オス・メスのペア.