兵庫県の幼虫ガイド
H016. セスジイトトンボ Paracercion hieroglyphicum
セスジイトトンボ終齢幼虫
写真1.セスジイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長21mm前後.2010.4.24.
<特ちょう>
 セスジイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.写真2上のように,腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽいはん点が1つずつあるのが特ちょうです.このはん点はうすいものがあります.尾さいの半分より先に,3つの茶色の大きなはん点がならんでいます.ただし,写真2下のように,このはん点は,うすくなって,見えないときもあります.尾さいの,枝分かれした細かいスジ(気管分枝:きかんぶんし)は,白や黒のまだら色になっています(写真3).

セスジイトトンボの背面図と尾さい セスジイトトンボのなかまの尾さい
写真2.セスジイトトンボの腹部背面と横からの全形図.
腹部横のはん点も,尾さいの大きなはん点も,あまりはっきりしない.
写真3.セスジイトトンボのなかまの尾さい
 


<よく似た幼虫との区別>
 セスジイトトンボは,クロイトトンボオオイトトンボムスジイトトンボの幼虫と,とてもよく似ています.ほとんど区別ができません.大きさ,体の模様,下唇の形や毛の数,どれをとってもほとんど同じです.ただ一つ,少しだけちがいが見られるのは,尾さいの形と模様です(写真3).ただ,尾さいはちぎれたり,ちぎれて再生したりすることがあって,形が変化することが多いので,注意が必要です.
 尾さいがいちばん細長いのは,オオイトトンボです.中央に茶色のスジが入るものが多いです.枝分かれした細かいスジは,あまりつまっていなくて,スジとスジの間があいています.セスジイトトンボと同じように,茶色の大きなはん点が半分より先に出ることがありますが,うすいことが多いです.ムスジイトトンボは,尾さいのはばが,いちばん広く,とくに半分より先のほうが,少しふくらむ感じです.セスジイトトンボの尾さいは,クロイトトンボのなかまの中で,いちばんはばがせまく,長さも短いです.
 なお,クロイトトンボでは,腹部の横のはん点と尾さいの大きな褐色の斑点は,必ず見られ,ほかのクロイトトンボのなかまのものより,はっきりしています.しかし,結局,区別できないことが多いので,そのときは,クロイトトンボのなかま(クロイトトンボ属(ぞく))ということにしておくようにしましょう.


<さがす場所のヒント>
 セスジイトトンボは川の住人です.しかし,平地にある大きな池や湖でも,見られることがあります.どちらかといえば,まわりに木々がない,明るい,開けた池や川が好みです.川にしても,池にしても,モなどの,水生植物が多くしげっているところに見られます.モがたくさんしげった池で,大発生することがあります.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,終齢幼虫を採るなら,4,5月が適しています.幼虫は,モの中にもぐりこんで生活しています.

セスジイトトンボの産卵場所.
写真4.川の,モがたくさんしげっているところで,モに産卵している,オス・メスのペア.