トップ写真の解説
この10年ほどの間に,セスジイトトンボは大いに数を減らしました.池に繁茂していた沈水植物が,主に外来生物の影響で消失したことが大きな原因のような気がします.春のトンボが終わりを告げるころ,アオハダトンボが飛ぶ川で,流れに洗われる草に産卵するセスジイトトンボのカップル.実に5年ぶりぐらいにみた産卵のすがたです.
連結植物組織内産卵.2021.5.30.
成虫
成虫は5月ころから9月下旬まで連続的に姿を見ることができます.春に現れる個体は大型ですが,秋口に現れる個体はいくぶん小さいような感じがします.成虫は周辺の草むらで夜を過ごし,朝,同じ場所で餌をとり,水辺へ出て行きます.オスはメスを水辺で見つけているようで,アオモンイトトンボ属のように,草むらで交尾をしている個体は意外と見かけません.交尾後,連結状態で産卵するのがふつうです.生活史については不明な点が多いのですが,一年一化の群以外に,秋口に少し小さな個体が現れることから,一年二化している群が存在している可能性があります.
移精行動交尾.2021.5.30.
幼虫
セスジイトトンボの幼虫はクロイトトンボとよく似ており,ほとんど区別がつきません.尾鰓がやや短く円い感じがするものの個体差が大きく手がかりにならないのです.結局羽化させる以外に確実に見分ける方法はありません.本写真も上の交尾写真の池で採集し,後に羽化させたものです.幼虫で冬を越しています.
スタジオ写真.2010.4.24.