H036. クロスジギンヤンマ Anax nigrofasciatus nigrofasciatus
<特ちょう>
ヤンマ型をした幼虫で,
ギンヤンマに非常によく似ています.見ただけではほとんど区別がつきません.終齢幼虫の体の色は,
ギンヤンマにくらべるとやや暗い色で,緑味を帯びた茶色をしています.目は,
ギンヤンマと同じように,大きく横に広がっています.クロスジギンヤンマには背中のとげ(
背棘:はいきょく)はありません.写真3のように,腹の横の部分にはとげ(
側棘:そっきょく)があります.
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写真2.クロスジギンヤンマの複眼は大きく横に広がっています. |
写真3.クロスジギンヤンマの横のとげ.第7〜9節にあります. |
<よく似た幼虫との区別>
クロスジギンヤンマの幼虫は,
ギンヤンマととてもよく似ています.ふつうに見ただけでは区別がつきませんが,よく使われる方法が一つだけあります.それは
下唇側片(かしんそくへん)の形のちがいです.ただこれも,なれないとなかなかむずかしいので,何度もしっかり観察して,できるようになってください.写真4にあるように,クロスジギンヤンマの
下唇側片の先はまるくなっていますが,
ギンヤンマの
下唇側片の先はやや角ばっています.
<さがす場所のヒント>
クロスジギンヤンマは,木々で囲まれた池が好きなヤンマです.池のまわりに木が生えていないような池にはあまり住んでいません.写真6のように,卵は水生植物に産みつけられますので,水生植物がたくさん茂っているような池でなければいけません.幼虫はそういった植物の茎につかまって生活しています.
クロスジギンヤンマの成虫は春から初夏にかけて現れ,それ以外の季節にはすがたを見せません.春に産みつけられた卵は,すぐにかえって幼虫となり,幼虫はどんどん大きくなります.そして秋には
終齢幼虫になります.でも,この秋の
終齢幼虫は,いくら飼育しても,すぐには羽化しません.春を待って羽化するようになっているからです.ですから羽化を観察したいときは,3月ころに幼虫をとりに行くとよいでしょう.そうすると4月ころに羽化が観察できます.
写真6.クロスジギンヤンマの産卵.クロスジギンヤンマは水面に広がる植物に卵を産みつけます.幼虫は植物につかまって生活しています.