トップ写真の解説
ウチワヤンマは,池の浮遊物に卵を貼り付けるような産卵を行います.ウチワヤンマの卵の後極には粘着性の糸が折りたたまれて付着しており,打水して糸が水に触れた時,それがほどけて産卵基質に絡みつきます.そのとき,糸が,メスの生殖口と産卵基質をつなぐように引き伸ばされることがあります.写真には,メスの生殖口から延びる粘着性の糸に卵が付いているのが分かります.
産卵するメス.生殖口から細い糸が伸びており,卵が付いているのが見える.2018.6.9.
成虫
5月下旬から9月に入るまで成虫を見ることができます.以前は盛夏のトンボの印象があったのですが,タイワンウチワヤンマが増えだしてから,6月にもっとも数が多く見られるようになった感じがします.未熟なうちは谷筋の奥の草原などに集結して,オス・メス入り混じって成熟を待っている姿が観察できます.メスは成熟しても,産卵しないときはそういった場所にいるようです.
オスの静止.2010.8.8.
幼虫
ウチワヤンマの羽化殻は,コンクリートの護岸上や,ため池に設置されている樋などに付随する杭の上についていることが多いです.平地の広い池に生息する本種は,かつてそういった池にヨシがたくさん生えていたことを考えると,ヨシの茎につかまって羽化する姿がふつうだったのかもしれません.幼虫期間はおそらく2年です.幼虫は池の深いところで生活しており,ふつうの方法では採ることができませんが,秋に大きく水を落としたため池で採れることがあります.琵琶湖では貝引き網に入ると聞いています.
コンクリート護岸で羽化する.2008.7.5.