トップ写真の解説
長い間クロサナエを探し続けました.幼虫はよく採れるのですが成虫の姿をさっぱり見ませんでした.そんなクロサナエでしたが,産卵ポイントをやっとのことで見つけました.クロサナエはこのポイントに,観察に行くたびに1,2回は必ず産卵に降りてきます.どうも降りてくる場所には,樹木の生え方茂り方や河川の石や植生といったものからつくられる,空間的配置が関係しているように見えます.この場所を知ってから,クロサナエの観察は容易になりました.
産卵するメス.2014.6.7.
成虫
4月下旬から7月にかかるまで見られるます.成虫は樹冠部で生活しているらしく,川の石などの上に止まっているところを見る機会は非常に少ないです.たまに降りてきても,短時間でまた樹上へ飛び上がります.不思議なもので,オスが下りてくる前後にはかなりの頻度で,メスが産卵に来ます.オスは樹冠部でメスを追いかけまわしているのではないかと想像してしまいます.産卵は源流域の河原の,下に水がほとんどないようなところで,停止飛翔をしながら一粒ずつ卵を落としていきます.
オスの静止.2014.5.31.
幼虫
クロサナエの幼虫はダビドサナエに似ています.オスの場合は肛上片上の突起の形態で区別できますが,メスはとても難しいです.羽化間近な幼虫は,必ずというわけではありませんが,写真のように腹部第9節の両側縁に白色部が顕著になる傾向があります.また体色も黒っぽくコントラスト感があります.こういう個体が採集できたらクロサナエを疑ってみるとよいでしょう.幼虫の採集経験からすると二年一化しているようです.
スタジオ写真.2008.4.6.