約一週間前にムカシトンボを観察に行きました.そのとき,クロサナエやヒメクロサナエはまだ早いように感じました.そこで,今日はこれらのトンボの状況を見に行ってきました.結果は,ヒメクロサナエは活動は開始しているもののまだ少し早い感じで,クロサナエは最盛期,そしてムカシトンボはまだまだ頑張っているといった状態でした.
クロサナエはかなり動いていて,樹上から降りてきたかと思うとまた飛んでいく,といったことを繰り返していました.ちょっと枚数は多いですが,たくさん見たということで,写真もたくさん掲げてみます.
この時期の源流域のトンボ観察は,とにかく待つ,これ一つです.同じ場所に陣取って6時間, 今日は粘ってみました. クロサナエは,オスがのべ15頭くらい樹上から下りてきたようです.でも川での滞在時間はせいぜい2,3分.すぐに樹上へ帰って行きます.たくさん下りてきたオスに対し,メスは2回産卵に来たのと,通過したのが1回,そしてオスに連れ去られたのが1回でした.
上の写真は通過個体です.どこかで産卵していたのかも知れません.1回目の産卵は発見が遅く,記録は撮れませんでした.2回目は何とか記録が撮れました.
クロサナエは,写真のように,一つずつ卵を落とします.落ちる卵は割合写真に写りやすいので,おそらく連続して卵を落としているのだろうと想像できます.そういう意味で面白い写真が撮れました.下の写真には,産卵弁に2個の卵が,続くように並んで写っています.そしてこれをすぐ上の写真と比べますと,卵は,産卵弁から,ベルトコンベアーに載せられているかのごとく,すき間なくつながるように押し出されてきて,先端まで来たら一つずつぽろぽろ落ちていくのではないかと考えることができます.コサナエ属と違って,クロサナエなどダビドサナエ属は,身体全体を振って放卵するという動作はとりません.小さく移動しながら,卵を爆撃機の爆弾のように落としていくだけです.
クロサナエは,メスが産卵に下りてくると,必ずと言っていいほど,少し後にオスが同じ場所に下りてくるのです.今日もこのメスの後にオスが下りてきました.下のオスです.
ご覧のように,クロサナエは活動最盛期のように見えました.けどメスの数が少なかったのが残念です.これはきっと,雨の後の晴れだった昨日にたくさん出てきていたのではないかと,悔し紛れに解釈しておきました.
さて,クロサナエに負けずよく見かけたのがムカシトンボでした.今年はムカシトンボの発生数が多いように思えます.例年ですとこの時期にはもう数の減少を感じるのですが,今年はまだ感じられません.オスもよく飛んでいましたし,あちこちの葉に産卵痕が見られました.発生が遅いこともあるでしょうが,5年とも8年とも言われる長い幼虫期間を持っているムカシトンボ,個体数の年変動は,同時出生群それぞれの個体群密度の違いを反映しているのかも知れません.今年の出生群は個体数が多い群なのかも知れません.
2時を過ぎたころです.待っていた私のすぐそこにムカシトンボが産卵に入りました.本当はクロサナエを待っているのですが,来た獲物はすべていただくと言うことで,しばらくこちらを記録しました.近づいて行くと,もう1頭別のメスがほぼ同じ場所に産卵に入り,ダブル産卵になりました.
このダブル産卵の途中,1頭のオスがメスを探しながらすぐそばを飛びました.でもオスはこの2頭のメスのどちらも見つけることができなかったんですね.止まっているメスは見つけにくいのでしょうか.ギンヤンマなどは,産卵ペアをめざとく見つけるのですけどねぇ.これ以外にもメスが1頭入りました.入った場所が非常に見にくいところでしたので,もう放っておきました.たくさんいるとこんな贅沢な感じになってきます.
さて,これ以外にはヒメクロサナエが時々下りてきました.動きは始まっているようです.また産卵にも来ました.実は,到着してすぐ,1頭のヒメクロサナエのメスが産卵にやって来て,カメラを持って近づこうとしたら,すでに別のメスが同じところで産卵していたようで,それが驚いて飛び立ち,飛び立ったことに驚いて,入ってきたメスも逃げてしまったのです.きょうはヒメクロサナエの産卵はこれ1回きりでした.
今日は,天気予報で,大気が不安定なので雷雨が降るかも知れないという予報でした.雷が鳴ったら帰るという感じで粘っていましたが,天気予報はいい方に外れ,最後まで晴天でした.産卵はあまり見られませんでしたが,オスたちの元気な姿が濃かったのがよかったです.帰り道でヒラサナエを見に立ち寄りました.
今日はここまでにします.