兵庫県の幼虫ガイド
H063. エゾトンボ Somatochlora viridiaenea
エゾトンボ終齢幼虫
写真1.エゾトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長は23mm前後.1994.4.11.
<特ちょう>
 エゾトンボはトンボ型の幼虫です.翅芽(しが)はまっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)はやや太く長いです.体はやや固い感じです.腹部の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にありますが,いずれも小さいです.背中のとげ(背棘:はいきょく)第3−9節にあります.写真2のように,下唇(かしん)を引きのばして,下唇側片(かしんそくへん)を見ると,その上の側刺毛(そくしもう)の数はふつう8本で,腮刺毛(さいしもう)の数はふつう10−12本の間です.

エゾトンボのかしん タカネトンボ,エゾトンボ,ハネビロエゾトンボのはいきょく
写真2.エゾトンボの下唇
側刺毛の数はふつう8本,腮刺毛の数はふつう10−12本の間です. 
写真3.エゾトンボ,エゾトンボハネビロエゾトンボ背棘の形.
第8,9節の背棘は,エゾトンボのものが中くらいの太さです.


<似た幼虫との区別>
 トラフトンボタカネトンボ,エゾトンボ,ハネビロエゾトンボは,いずれもとてもよく似ていて,区別が難しい幼虫です.この中で,トラフトンボについては,トラフトンボのページを見てください.
 残りの2種,タカネトンボハネビロエゾトンボとの区別は,とても難しいです.写真3のように,背棘の形で見分けるか,写真4のように,下唇を引きのばして,側刺毛腮刺毛の数で見分けるしかありません.幼虫を採った場所も参考になります.タカネトンボは池,エゾトンボは湿地(しっち),ハネビロエゾトンボは小さな川に,ふつう住んでいます(例外もあります).

エゾトンボ科4種のかしん
写真4.エゾトンボのなかま4種の,側刺毛の数,腮刺毛の数,下唇側片の先の切れこみの比かく.
トラフトンボ側刺毛:6本,腮刺毛:8−10本,下唇側片の先の切れこみ:深い.    
タカネトンボ側刺毛:9−10本,腮刺毛:14−16本,下唇側片の先の切れこみ:浅い. 
エゾトンボ:側刺毛:8本,腮刺毛:10−12本,下唇側片の先の切れこみ:浅い.     
ハネビロエゾトンボ側刺毛:7本,腮刺毛:10−11本,下唇側片の先の切れこみ:浅い .
<さがす場所のヒント>
 エゾトンボは湿地(しっち)の住人です.泥(どろ)がいっぱいたまっていて,その上を浅く水が流れているような場所が好みです.しかしこのような場所をすくっても,なかなか幼虫は採れません.植物が生えていれば,その根もと近くにもぐっていることがあります.また小さな水たまりができていれば,そこに入っていたりします.湿地をていねいにすくうしか方法はありません.幼虫は一年中採れますが,終齢幼虫は,ふつう5,6月にしか採れません.ただ最近,エゾトンボは,兵庫県では数が減っていて,ほとんど見つかりません.

エゾトンボの産卵場所.
写真5.産卵にやって来たメス.湿地の水の上を腹部の先でたたくようにして卵を産みつけます.