トンボノート
No.921. ハッチョウトンボの産卵.2023.6.20.

今日は薄曇りだったのですが,梅雨時でもあり,このような天気でも調査に出た方がよいと考えて出かけることにしました.最初のねらいは神戸のキイロサナエです.過去にたくさんの記録がある場所へ出かけたら,川に沿った通り道の草刈りがなされていなくて(といっても文句を言う筋合いではないのは承知していますが),藪漕ぎ的な進軍を余儀なくされました.でも目的の場所に着いても,何もいません.シオカラトンボが1頭だけ飛んだだけでした.

そこで,次に目的を変え,神戸のグンバイトンボが生き残っているか確かめに行くことにしました.やはり過去の記録地に行きましたら,今度は30分ほど川に沿って歩いて,シオカラトンボ1匹さえ飛ばず,全くトンボと出会いませんでした.一体何なのだこれは,と非常な落胆を覚えました.30年あまり前ここは,ホンサナエがいっぱい飛んで,アオサナエもいて,グンバイトンボがツイツイ飛んで,セスジイトトンボも飛んで,というところでしたが....神戸のトンボはどこへ行ったのであろう...30年という月日の重さを否応なく感じさせられました.歳をとると喪失感を味わうとよく言われますが,本当にこれが喪失感そのものです.

こうなると,なんとかトンボを見て帰らないと欲求不満になります.ということで,この場所の近くにある某有名湿原に行くことにしました.ここはいまでこそ有名地になって完全に管理されていますが,私が神戸のトンボを探していたころには,アクセスが悪いのを我慢して入っていった場所です.そのころは全く自由に湿原の中でトンボの観察が出来ました.まあこれも時の流れですね.今は木道が整備され,そこからハッチョウトンボが身近に観察できます.


▲ハッチョウトンボのオスとメス.交尾を解いたすぐ後のカップル.

着いたのがちょうどお昼前,ハッチョウトンボが繁殖活動を行う時間帯です.木道から見える目の前に,交尾しているカップルを見つけました.ただ,これはすぐに離れましたので記録にはありません.メスは交尾後止まったままじっとしていますが,やがて産卵を始めるはずです.待つことにしました.すると,もう1頭メスがいたようで,草陰から飛び出し産卵を始めました.


▲草陰から飛び出したもう1頭のメスが産卵を行った.

このメス,撮影時からなんか色が白っぽいなと感じていましたが,家で写真を見て分かりました.翅胸前面・側面の斑紋が,通常のメスと違っているのです.下の写真と比べてみるとよく分かります.


▲通常の斑紋のメス.上のメスは淡い部分がぼやけるように広がっている.

さらに別の場所で撮った未熟なメスとも比べてみましたが,未熟であっても,斑紋の基本的なパターンは同じで,このメスはやはり斑紋異常と言えそうです.


▲2023年6月4日撮影.未熟なハッチョウトンボのメス.

さて,このメスはやがて産卵を終えて飛び去りました.オスがそれを追いかけていきました.最初のメスはまだ止まったままで産卵を始めていません.オスたちは相変わらずあちこちで追いかけ合いをしています.


▲オスたちは相変わらずものすごい速さで追いかけ合いをしている.

しばらく待ちますと,最初のメスが産卵を始めました.ハッチョウトンボは産卵の途中でよく静止します.このメスも例外ではありません.


▲最初のメスが産卵を始めた.

何度も静止を繰り返して打泥産卵を行っていましたが,やがて別のオスに捕まって交尾されてしまいました.


▲ハッチョウトンボの交尾.たいがい産卵した後の交尾なので,成果はあるか?

その後このメスを見失ったので,ここまでとしました.空は少しずつ青空が広がり,気温も上がってきました.帰り道に別の木道のところでメスを捕まえ交尾するハッチョウトンボを見つけました.記録をとりましたが,メスは交尾後飛び去りました.先と同じで,きっと産卵後交尾だったのでしょうね.


▲交尾するハッチョウトンボ.十数秒で終わったあとメスは逃げ去った.

ということでハッチョウトンボはそれなりにいて活動していました.でも,他のトンボがほとんど見られません.往き帰りを含めて湿原およびアクセス道路をかなり歩いたのですが.シオヤトンボ1頭,コシアキトンボ1頭,アサヒナカワトンボ1頭を見ただけでした.本当にトンボが少ない.途中うす暗い池などもあったのですが,モノサシトンボ1頭すらいませんでした.うーん,多様性に乏しすぎる....

今日はここまでです.