コサナエ属の3種の出現を見たので,今日は残りの1種,コサナエの羽化を見に北部へ出かけてきました.風は涼しくまだ20℃になっていません.最初に川に入り,ダビドサナエなどの羽化が始まっていないか見てみました.なかなか見つかりませんでしたが,合計3頭が飛び立ち,1頭だけなんとか写真にできました.羽化殻は2個ありました.
川ではこれ以上のトンボは見つかりませんでしたので,次はカワトンボが入り込む谷筋に行ってみました.途中流れの縁からカワトンボが2頭ほど飛び立ちました.谷筋に入っていきますと,ニホンカワトンボがあちこち飛んでいました.
アサヒナカワトンボも少し混じっていました.しかしすでに細流の縁でなわばり活動をしている個体がいました.縁紋はまだほんの少し赤みを帯びている程度で腹部の白粉もまだうっすらという感じの個体でした.でも他のオスとバトルをやっていましたから,もう十分成熟気取りでした.
さて,コサナエを見に行くことにしました.10時半ぐらいです.日差しは申し分なく羽化していてもいい感じでした.しかし,羽化殻は10個以上あったのですが,羽化している個体がいません.もう一つ別の池にも行ってみましたが,同じ状態で,羽化殻だけしかありませんでした.遅かったかと思いました.
あちこち,未熟個体を探してみましたが,見つかりません.樹上に上がっているのでしょうか.12時を過ぎ,もう一度最初の場所へ戻りました.すると,羽化しているコサナエを1頭見つけました.最初来たときはまだ涼しいくらいでしたから,これくらい暖かくなった時間に羽化を始めたのかもしれません.
やがて腹部を抜き,順調に羽化を観察できるかと思い,まあ1頭だけでも見られただけよし,と腰を落ち着けたときでした.突然,羽化していたコサナエが向きを変え,水の中に入るような動きを見せました.どうしたのだろう? よく見ると,なんと,アメンボがへばりついて口吻を体に突きつけようとしているのです.
コサナエは,結局一周して,元の位置に戻って,羽化殻につかまり羽化を継続し始めました.途中でやめる訳にもいかないのでしょうね.アメンボが反対側にくっついているので,私も反対側に回り込んで観察を続けました.果たしてこの状態で羽化を無事完了できるのだろうか,興味はその一点になりました.
アメンボも,口吻がなかなか突き刺さらないのか,ごそごそと動き回っています.で,このまま無事羽化してしまうかもしれないという期待が持てました.このとき別の場所からコサナエが処女飛行に飛び立ちました.もっとよく見渡しておくのだったと思いましたが,飛び立って止まったところを撮っておきました.
ちょっと目を離した間に,アメンボがいなくなっていました.アメンボのヤツ,口吻が突き刺さらないので諦めたかな,と思ったりもしましたが,写真を撮ってみると,体液が出ていました.突き刺さっていたのですね.
コサナエはなおも羽化を継続しましたが,やはり異変が起き始めました.肛門水が出てきたのですが,それがやたらでかく,うまく落ちません.腹部に水を押し出す力が入らないようで,肛門水を落とすことができないみたいです.
そしてとうとう耐えかねたのか,翅を半開きにして,すぐ横の枯れ枝によじ登り始めました.アメンボもまだくっついていこうとしています.
そして最後,木の枝にぶら下がるようになりました.その後しばらく見ていましたが,やがて,風で,枯れ葉が揺れるように,ぶらぶらするようになりました.足でしがみついたままどうやら絶命したようです.木によじ登ったのは,本当は処女飛行に飛び立ちたかったのかもしれません.おそらく力尽きて,よじ登るのが精一杯だったのでしょう.でも最後まで一歩でも高く空を目指して行く姿に,ちょっとお涙ちょうだいになりました.
コサナエ属は本当によく羽化不全があるのですが,こうやって他の生物に狙われているのですね.そういえば,先日もタベサナエがカエルにやられていました.少し横には,少し以前に何かにやられたコサナエの遺体が水につかっていました.
コサナエは不幸な目に遭いましたが,すぐ足下ではシオヤトンボが羽化していて,こちらは元気に飛び立っていきました.
その他,ホソミオツネントンボやホソミイトトンボが活動していました.
北部はひっそりと春が始まっているようでした.