トンボノート
No.741. コフキトンボの群れ.2020.6.29.

今年はある池でコフキトンボがたくさん発生しているので,群れている状態を観察・撮影にちょっと出かけてきました.

▲コフキトンボの群れ.

コフキトンボは,私のもっとも好きなトンボの一つですが,最近はなかなかこれくらい群れているところを見る機会が少ないので,少し嬉しくなりました.池中これだと大発生というところですが,池の植生のある場所に集まっている感じでした.それでも,池の周囲には2,3mごとに止まっていました.





▲コフキトンボの群れ.一番下は,14頭が写っている.

よく見ると,単独でいるのは,十分成熟したオスが多いことに気づきました.どれが成熟したオスかは,本当のところ分からないのですが,複眼が真っ黒になり,青灰色の腹部に黒いシミのような斑が出ている個体は,単独で池の周囲に散らばり,縄張りを形成していました.コシアキトンボほどではないものの,ときどき,2頭が並んで停止飛翔した後追尾するような動きをしていました.

▲オスは止まっていることが多いが,ときどき飛んで縄張りを監視している.
▲池に単独で出ている個体にはオスが多く,腹部に黒い斑が出ている.

産卵行動をビデオに撮りたかったので,来そうなところで待つことにしました.そこは,黒い斑を持つオスが,水面に浮かぶキショウブの葉を産卵基質とみて,縄張りを形成しているところでした.もっともときどき姿を消すなど,弱い縄張り意識しかないようなオスではありました.キショウブの葉にはコフキトンボの卵がたくさん貼り付いていました.過去に産卵をしたところのようです.

▲右上にオスが止まっている.水面に浮かぶキショウブの葉にはコフキトンボの卵が付着している.
▲この場所で縄張りを形成しているオス.
▲キショウブの葉に付着したコフキトンボの卵.眼点ができて発生が進んでいる.

2時間半待ちましたが,結局ここには産卵に来ませんでした.交尾態が飛んで向こうの方に行くのを見ただけでした.ビデオは追いかけて撮ってもいい映像が撮れないので,待って撮ることが多いのですが,今日はダメでした.

観察で気づいたのですが,群れて止まっているのは,メスと,まだ複眼が黒くなっていないオスで,複眼が黒くなり腹部に黒いシミのような斑が出ているオスは,単独でいて,縄張りを形成しているようだということでした.

▲群れの中にいるオス.2頭ともオスであるが複眼が黒化していなくて青灰色粉もうすい.
▲上がメスで下がオス.やはりオスは複眼が黒化していない.
▲左がオスで右がメス.複眼が黒化していなくて青灰色粉が十分吹いていないオスである.
▲単独で池の周囲に止まり,縄張りを形成していると思われるオス.複眼が黒化している.
▲ちょうど両者の中間的な感じのする単独オス.複眼はまだ完全に黒化せず腹部に斑もない.

まだ仮設段階ですが,今日の観察結果から言えることは,コフキトンボのオスは未熟なうちには群れて生活し,成熟が進んでくると単独で活動するようになっていくのではないかということです.単独活動を始めるサインは複眼の黒化と腹部のシミのような黒斑が出てくることです.一方のメスはどうなっているのかは分かりません.成熟しても群れの中にいるのか,群れから離れて草地などで生活するのか,今年は数の多いこの池ならそういった観察ができそうです.最近は個体数が激減し,未熟でも成熟でも孤独な個体が多いですから.

今日それ以外にいたトンボは,ウスバキトンボ,ショウジョウトンボ,チョウトンボ,オオヤマトンボ,ウチワヤンマ,コシアキトンボなどで,後はオオキトンボが羽化して飛び立ちました.

▲いつものように追尾行動をしているコシアキトンボ.
▲ウチワヤンマのオス.交尾態での飛翔は一度だけ観察したがどこかへ行ってしまった.
▲オオキトンボの処女飛行後の個体.