トンボノート
No.712. オナガサナエの打水産卵.2019.8.3.

夏の恒例行事その2,オナガサナエの産卵ショウを見に行ってきました.いつもオナガサナエの産卵を見に行くときは,夏の朝曇り状態で,太陽の光を受けた写真が撮れないのです.今日は,どうやら朝から太陽が顔を出していそうです.それでも太陽がある程度高くなった方がいいので,現地に9:00前に着くように出かけました.早朝の方が産卵観察にはいいことは分かっていますが,光を優先しました.







▲オスはあちこちに止まっていて,私と縄張り争いを展開した.

現地に着くと,今日はオスがたくさん出てきていました.オスたちの活動が活発なようです.またメスの方も活動が盛んなようで,11:00の観察終了までの2時間の間に,たくさんやって来たのですが,途中で分からなくなって,数えるのを止めてしまいました.





▲オナガサナエの停止飛翔産卵.

次々にやって来るオナガサナエの産卵を観察していると,最初のうちはいつも通り,停止飛翔をして,空中から乾いた卵をパラパラ落とす,停止飛翔産卵を行っていました.ところが,時間がたって暑くなってくると,産卵中のメスがときどき打水するようになりました.「ときどき」というのは,通常打水動作は,産卵が終了して飛び去る前に見られるのがふつうだからです.ところが,打水後も産卵を続けている個体が散見されはじめました.11:00前になりますと,まるで連続打水産卵というような,水面近くを往ったり来たり素早く飛びながら,ときどき打水するような動作を見せるメスが現れました.





▲打水動作をときどき挿入しながら産卵するメス.卵塊が水を含んで丸くなっているのが見える.

打水動作を間に挟むと,腹端が水に濡れるため,卵塊が水を含んで丸い形になります.ふつうオナガサナエの卵塊は,乾いた状態で形成されるので,いびつな形をしています.

▲停止飛翔産卵を行うときの通常の卵塊の形.乾いているのでいびつな形をしている.2018.8.1.

そして,この水を含んだ丸い卵塊を形成しているメスは,打水時に水中に放卵していることを示す写真が撮れました.コオニヤンマなどが行う打水産卵と同じです.空中で卵塊を形成して,打水・放卵するという様式です.

▲停止飛翔して卵塊形成中のメス.丸い卵塊が,卵でいっぱいになっているように見える.
▲打水する場所を見極めるように水面上で停止飛翔するメス.
▲打水した直後の状況.水滴が落ちている.
▲上の写真の打水された水面部分を拡大したもの.ピンク色の卵が水中に広がっているのが見える.

オナガサナエが打水産卵をするという報告は,すでにあることはあるのですが,私は初めて観察しました.また確実に放卵している証拠写真も撮れました.

トンボというのは状況によって,このように産卵様式を変更することがあるというのが分かります.でも何がそうさせるのかが興味あるところです.今日の観察では,初めのうちは通常の停止飛翔をする個体が多かったように感じましたが,暑くなってきたころのメスに,打水動作が多く見られたように感じます.暑すぎると,通常の乾いた卵塊が形成されにくくなるのかも知れません.

▲オナガサナエのメスをエサとしてお持ち帰りしたコオニヤンマ.この直後捕食したのだ.

今日はたくさんの連れ去られるメスを見ました.オスによる恋のお相手としてのお持ち帰りが4回,コオニヤンマによるお食事としてのお持ち帰りが1回ありました.その他,カメラやビデオに収められた個体だけでも10個体,さらに見逃しが数個体いましたので,20頭近くが産卵に訪れたことになります.