トンボノート
No.693. アオハダトンボの観察.2019.6.6.

いよいよ梅雨入りも近いとの予報.今日はその前の晴天.いろいろと行ってみたいところはありますが,アオハダトンボにしました.アオハダトンボは梅雨の時期のトンボですので,曇った日の記録が多いのです.太陽が射して水に透明感があるような絵があまりありません.

▲朝の日差しを浴びて翅を開閉するアオハダトンボのオス.
▲同じく朝日を浴びて翅を開閉するアオハダトンボのメス.

現地に入りますと,水位がものすごく低い.最近あまり多く雨が降っていないのと,田んぼに水を引いているためでしょうか.ツルヨシの茎や葉がが水に洗われるといった風景がありませんでした.その代わり底に根を下ろしているコカナダモが水面に姿を見せている状態で,アオハダトンボはそこに集まっていました.あまりきれいじゃないのですねこれが...

▲9時過ぎにすでに産卵を始めていたアオハダトンボ.
▲いくら水に透明感が出ても,薄汚いコカナダモでは,清流のイメージはしません.

アオハダトンボはお昼頃産卵すると思っていたのですが,9時過ぎにはもう産卵を始めていました.オスの縄張りの中で,オスの警護を受けながらの産卵です.この後ビデオを回し,12時ころまで頑張りました.すると,雲一つなかった空がいつの間にか全天雲だらけに.でもこのころに再び繁殖活動が活発化しました.しきりにメスに対するディスプレイが行われ,メスの方も産卵意欲が高まってきているようでしたので,すぐに交尾,産卵へと進みました.

▲さっと入って産卵を始めたメスに,オスが腹部を上げて誘いをかける.
▲オスは思い切って飛びたち,メスに接近を試みる.
▲素面に浮かぶような姿勢もちょっととったりして...
▲メスが高い位置に飛ぶと,ホバリングしながらそれを追いかけていき...
▲メスがさらに高いところへ逃げるとそれを追いかけ,...
▲ついに捕まえて,移精から交尾へ(草にうまくつかまることができず飛んで石の上に止まった).
▲メスを高く持ち上げるようにしてうまく位置を合わせて交尾にいたる.
▲そしてオスの縄張り内で,オスの警護を受けながら産卵を始める.

これで,このメスは,交尾オスの縄張り内で安心して産卵を続けることができます.他のオスがこのメスを奪いに来るような気配があると,縄張りオスは猛然と飛び立って,闘争を挑み,たいがい他のオスを追い払ってしまいます.

▲左が縄張りオス.右のオスが産卵をしていたメスを見つけ,近寄ろうとしている.
▲両者の闘争が始まった.左が縄張りオス.
▲闘争の途中オスの体がメスに触れたようで,思わず飛び上がったメス.

まあ,いつものことですが,こういった闘争があちこちで行われていました.観察は14:00まで続けました.メスは黙々と産卵し,オスは闘い続ける.初夏の昼下がりでした.この場所も浚渫されると一気にダメになってしまうように思えます.ここより下流は浚渫が行われているからです.まあ,今年も無事を確かめたというところです.

▲黙々と産卵に集中するメス.
▲警護しながら,他のオスやさらなるメスを監視する,オス.

さて,アオハダトンボにつきものなのがグンバイトンボです.今日はグンバイトンボの姿が少なかったように思います.アオハダトンボは,広く分散せずコカナダモのあるところに集まっているため,密度が高く感じられました.グンバイトンボはちょっと違う植物に卵を産むようです.



▲グンバイトンボの若いオス.

グンバイトンボのオスはちらほら飛んでいるのですが,タンデムになったペアがなかなか見つかりませんでした.やっとのことでワンペア見つけ,記録を撮ることができました.

▲タンデム態のグンバイトンボのペア.
▲ペアは飛んで産卵基質を探している.


▲ややっぱりコカナダモには産卵していないみたいだ.

これ以外にも,いくつかのトンボたちが姿を見せていました.アオサナエ,クロイトトンボ,セスジイトトンボなどのこの時期のトンボたちと,ニホンカワトンボの生き残りメスです.



▲アオサナエは,朝一番に見つけた.
▲セスジイトトンボはコカナダモのような沈水植物が好きなのに,数が少なかった.
▲クロイトトンボの交尾.水位が低く,川の一部が水たまりになっているところで.
▲ニホンカワトンボの老熟メス.まだ結構元気道に活動していた.

そして,次の季節の足音も聞こえ始めていました.オナガサナエが羽化していました.成虫は2頭,羽化殻は5,6個見つけました.また,もうハグロトンボが出ていました.10頭以上はいたように思えます.まだ羽も柔らかく,羽化してそれほど日にちが経っていない個体ばかりでした.アオハダトンボが消えるころには,この川はすっかり夏の景色になっていることでしょう.

▲処女飛行に飛び立ち,止まったオナガサナエのメス.
▲オナガサナエの羽化殻.石の上や草についていた.
▲ハグロトンボのテネラルなメス.

ニホンカワトンボ−アオハダトンボ−ハグロトンボ,と,順に出てくる3種のカワトンボが一同に観察できました.オナガサナエは夜に羽化し,朝が来るころに山へ飛び立つと思っていましたが,日が昇った後にも川にいることもあるのですね.

さて,明日からは雨の予報.梅雨入りするかも知れませんね.今年は,雨のシーズンは,幼虫の観察をしようと思っています.今日はここまで.