前回の観察からちょうど1週間が経ちました.11月も最終日を迎え,いよいよ明日からは暦の上での冬に入ります.昨日,今日と予報はあまり芳しくなかったのですが,実際は朝から晴れ間が出ていました.冬型の気圧配置のようで,いわゆる瀬戸内側の冬の晴れです.出発時の気温は11度でしたが,今日も前回と同じ2つの場所へ,定点観察に出かけることにしました.
まずは1つ目の池です.やはり池は満水で,アカトンボにはあまりいい感じではありませんでした.今日は周辺の農道での探索を行うことにしました.まずはマユタテアカネがいました.オスは5〜6頭見つけました.メスも1頭生き残っていました.
▲マユタテアカネのオス.道路横の日当たりのよいところに止まっている.
▲マユタテアカネのメス.
この場所では初めて見るのですが,ヒメアカネもいました.はじめはよく確認もせずにマユタテアカネだと決めつけていました.しかし撮った写真をよく見返してみると,腹部横の黒斑が大きいですし,尾部付属器も反り上がっていないように見えます.顔を見ようと前に回り込もうとすると飛び去ってしまい,結局最終確認はできませんでしたが,まずヒメアカネとして間違いないと思います.このオス,メスを見つけて,交尾しました.これらの個体は十分老齢化していますから,老いらくの恋という感じですね.
▲ヒメアカネのオス.この付近にはヒメアカネの産卵環境がないように思えるのだが....
▲ヒメアカネの交尾.メスの腹部が黒く,これはヒメアカネである.
あと,アキアカネが数頭止まっていました.前回見つけたコノシメトンボは今日見つけることができませんでした.キトンボはいましたが,飛ぶのを見ただけで記録には撮れませんでした.
▲アキアカネのオス.アキアカネは12月を目前にしても,どことなく若々しく見える.
ということで3種見つけて,次の定点池へ行くことにしました.着いたのは11:10ころでした.まず目についたのがアキアカネでした.アキアカネは結構数がいて,周辺の草地や水際を飛び回っていました.水際を歩くと交尾態が飛び立ちました.追いかけると飛び立ち,交尾態を解き,産卵を始めました.が,すぐにまた交尾態になって草むらへ隠れました.その後,水際で産卵しているペアを見つけました.近づくと,これも産卵を止め,交尾態になりました.今日のアキアカネは2組とも産卵を始めたものの交尾をやり直すといった行動をとりました.後者のアキアカネに焦点を当てて観察を続け,交尾・産卵の記録を撮りました.
▲草むらにいるアキアカネ.葉っぱに「ごろにゃん」をしている.
▲産卵を止めて再び交尾したペア.アキアカネの交尾.
▲交尾を終えると,池の水際の浅いところで産卵を始めた.
▲アキアカネの産卵.打泥した瞬間.
▲岸から離れて少し開水面のある方へ移動する.
▲今度は打水産卵をする.アキアカネの産卵.
アキアカネとほぼ同時に見つけたのが,キトンボとオオキトンボ.キトンボが飛び立つとオオキトンボがそれを追いかけて飛び,まだまだこの両種は元気に活動しています.まずはキトンボから.キトンボは2頭見かけました.キトンボどうしの追飛行動が見られたので間違いありません.
▲オオキトンボと追いかけ合いをした後のキトンボのオス.
▲池の岸の石に止まって休息するキトンボのオス.
次はオオキトンボ.オオキトンボは,少なくとも5頭のオスがいたことは間違いありません.池岸に止まり,オスどうしが追飛したり,元気に活動していました.この時期になるとメスが少なくなるのでしょう.「飢えた」オスたちは,オオキトンボが近くを飛ぶと,相手がオスであるにもかかわらずとりあえずタンデムになろうとします.そしてオスであることが分かると追飛します.今日はメスの姿を見ることができませんでした.
▲枯れ草に止まるオオキトンボのオス.この時期の体色は,完全に背景にとけこむ色になっている.
▲水辺の石に止まるオオキトンボのオス.光の色といい,土の色といい,やはり背景にとけこむ体色である.
▲明るい色のものに止まるのは,輻射熱に期待しているのだろう.
▲赤みを帯びて茶褐色になったオオキトンボのオス.鉄錆色というか,他に類を見ない渋い色である.
今日は,この池に以前いたタイリクアカネの姿を確認できませんでした.もう死滅してしまったのでしょうか.それともアキアカネが増えたせいでしょうか.トンボたちは寒くなってくると輻射熱を求めて白っぽいものに止まろうとします.この池はあまりそういった物がないので,すぐ近くに異なる種のトンボが止まることがよくあります.最後にそれらのツーショットを紹介して,今日の観察を終えます.
▲オオキトンボとアキアカネのツーショット.
▲アキアカネとキトンボのツーショット.
▲キトンボとオオキトンボのツーショット.
11月30日,暦の上での秋の最終日,今日の観察では5種類のアカトンボが生き残っていました.さて,12月に入って,最後まで生き残るのは,やはりキトンボでしょうね.