続 トンボ歳時記
No.642. コノシメトンボ,オオキトンボ,そして....2018.10.9. Part-2.

今日の観察の主目的は,コノシメトンボです.コノシメトンボは各地で見られますが,「確実」に見られて,かつ撮影しやすい場所,というのが今の私にはありませんでした.そこで,15年も前に来ていた生息地にやって来たわけです.でも結果を言うと,コノシメトンボの産卵は3回だけ.オオキトンボやキトンボの方が圧倒的に多かったのです.まあ嬉しい誤算といってもいいかもしれませんが,以外と普通種に苦労するというのは,皮肉なものです.コノシメトンボのオスは結構いて,10頭近くが,水面に出てホバリング飛翔しています.きっとメスを探しているのです.

▲水面に出てホバリングしているコノシメトンボのオス.

コノシメトンボの色はどちらかというと暗い色なので,産卵していても,キトンボやオオキトンボほど目立ちません.しかも結構動きが小さいのです.また岸近くというよりは少し岸から離れたところで産卵します.これは,つまり,完全に逆光になるということです.

▲コノシメトンボの産卵.打水した瞬間.

▲コノシメトンボの打水産卵.

▲チョンチョンと軽く打水するのが特徴.打水後あまり高く上がらない.

▲打水の瞬間.

岸辺に止まっているオスの顔写真を撮りました.この後も産卵に入りましたが,あまりうまく記録ができませんでした.主目的のトンボがいちばん貧弱な結果でした.また,市街地の池などで,コノシメトンボの記録を撮りたいと思っています.

▲コノシメトンボオスの顔写真.コノシメトンボは顔面まで赤くなる,唐辛子トンボだ.

さて,次はオオキトンボです.キトンボとオオキトンボが同じ池にたくさんいるというのはあまりないことです.平地の池でありながらまわりに樹林があるからでしょうね.さて,池に到着したころのオオキトンボは,例によって,オスが岸辺に止まったり,ホバリング飛翔しながら,少し岸から離れた池面を飛んだりしていました.産卵時間帯が来る前の,朝のオオキトンボの飛翔です.たぶんメスを待っているんだと思います.

▲岸に止まっているオオキトンボのオス.

▲驚かせるとこのように樹上に上がることもある.

▲水面に出てパトロール飛翔するオオキトンボのオス.

▲ホバリングしてじっと同じ場所に停滞するオオキトンボのオス.

最初のペアが産卵に訪れたのは,10:20くらいでした.オオキトンボは普通水落をした池の,水際の泥上で,打泥産卵します.しかし,この池も,他の池にもれず,満水状態でした.こういうときは,だいたい打水産卵をします.そして,そういうときは,やや,岸から離れた場所で打水することが多いのです.今日もその傾向が強く,あまり近くで記録を撮ることができませんでした.

▲オオキトンボは,打水後,コノシメトンボに比べると結構高い位置に上がる.

▲オオキトンボの打水の瞬間.かなり深く水を掻いている.

▲キトンボといっしょに産卵するオオキトンボのペア.右がキトンボ.

▲打水直後のオオキトンボのペア.なんか水が泡だって汚らしい感じがする

▲岸近くにやって来ることもあったが....

次の産卵ペアは,結構岸近くで産卵してくれました.ただ,今日は,キトンボでもそうでしたが,ピントに弱い日のようです.あまりうまく記録が撮れませんでした.浅い水際で打水産卵しています.池の底が見えるような浅さです.

▲底が見えるような浅い水際で産卵をするペア.

▲打水直前のペアの姿勢.背中側のオス・メスの角度が180度より小さくなっている.

▲打水直後のペアの姿勢.背中側のオス・メスの角度が180度より大きくなっている.

▲やっとのことで近くでもピントの来た写真が撮れた.

▲浅い水際で打水する瞬間.

その後のこのペアは,私の動きがやや気になるのか,私から逃げようとする動きが多くなりました.そして少し岸から離れた位置で産卵しました.岸に近づくときは私から離れた位置でした.今日は白い服を着ていったのが間違いだったかな.

▲岸から離れた位置で産卵を続けた.打水後の水紋が見える.

▲岸近くで産卵するときは,私から離れている.

▲草が生えている間で打水するペア.

一つ特筆すべきこととしては,以前マイコアカネの観察でも書いたことですが,この池でも,やたらとギンヤンマがキトンボやオオキトンボの産卵場に集まってきて,飛び回っているのです.ときどき急旋回して産卵しているペアに近づこうとしたりしました.産卵ペアは狙われていることを知っているのでしょうか,さっとよけて,何事もなかったように産卵を再開しました.ギンヤンマは,アカトンボの産卵場を餌場にしているのは間違いないようです.というのも,産卵が終わった後,ギンヤンマたちはだんだんとその場からいなくなっていったからです.ただ今日は捕まったアカトンボは見ませんでした.

▲アカトンボたちの産卵場を飛び回るギンヤンマ.

さて,面白いもので,11:00を過ぎると,ぱたっと産卵が終わってしまいました.キトンボもオオキトンボもコノシメトンボも,産卵にやって来るペアはいません.11:15くらいまで待ちましたが,それでもやって来ませんでした.まあ,所期の目的もなんとか達成できたので,帰りに池のまわりを歩きながら,この池で見られたいくつかのトンボを記録しておきました.ナニワトンボ,マユタテアカネ,ナツアカネ,それ以外にリスアカネもいました.アキアカネがいないのが寂しい感じです.そして,タイワンウチワヤンマもまだ健在でした.このトンボ,兵庫県南部では,キトンボが飛ぶころまで生き残っています.

▲ナニワトンボのオス.これ1頭だけが,キトンボらに混じって止まっていた.

▲マユタテアカネのオス.交尾や産卵も目撃した.

▲ナツアカネのメス.付近の田んぼで産卵しているのだろう.

▲タイワンウチワヤンマのオス.10月まで生き残っている.3頭ほどいた.

この池を後にし,帰りに少し田園地帯に寄ってみました.キトンボの他,ナツアカネが稲刈り後のひこばえが出ている田んぼで産卵していました.近づくとペアは離れ,メスが止まりました.オスは産卵を催促するように,しばらくメスのそばでホバリングしていました.

▲ひこばえの中,産卵を終えたナツアカネのペア.オスがメスを催促しているように見える.

今日はあえて短時間で切り上げました.しかし中身の濃い観察にはなりました.トンボを撮影する光の状態をもうちょっと考えて撮影位置を決めないといけませんね.逆光位置ばかりで,ストロボに頼りすぎた写真が多くなりました.次はアキアカネだ.