続 トンボ歳時記
No.643. タイリクアカネの観察.2018.10.12.

なかなかすきっと晴れません.今日は空高く絹雲がうすく広がり,太陽にフィルターがかかっているような空模様です.気温は20度に届いていないようで,フィルター太陽では地面の輻射熱もあまり期待できません.おまけに少し風がきつい.やっと秋らしくなったのはいいのですが,秋のトンボ観察は,すっきりとした青空でないと,トンボがあまり出てこないのです.まあそんなで,内心欲求不満を抱えながら,今日は都市の公園へタイリクアカネを観察しに行くことにしました.

9:18に到着,町中では車を駐車場に入れなければなりません.まだ空は曇っています.西の方に青空が見えるのでそれがやってくるのを期待して,水辺を歩きました.トンボたちは何もいません.しばらく行くと,西の青空の部分がこちらへやって来て,太陽の力が強くなりました.なおも歩いて行くと,木製の手すりに,タイリクアカネのメスが止まっていました.そしてさらに太陽の力が強くなってくると,オスもちらほら出てきました.

▲まだ空は曇っているが,タイリクアカネのメスが手すりに止まって出動準備.

▲公園の石に止まるタイリクアカネのオス.

11:00ころになるとやっと日差しも強くなり,服を通して,トンボが活動しそうな暑さを感じ始めました.ずっと以前に観察したところへ陣取り,タイリクアカネを待つことにしました.その池の上をギンヤンマがパトロールしていました.

▲人工池の上をパトロールするギンヤンマ.

ふと足下を見ると,小さな黄褐色のトンボが,単独で打水しています.ちょっと見かけない色彩と大きさです.はじめはすぐに何か分かりませんでしたが,近づいて目を凝らしてみますと,タイリクアカネのメスでした.この時期・時間なら,普通は連結産卵をしているはずですが,単独でチョンチョン打水するのは,きっとオスに出会うことがなかったからでしょう.確かに水辺をずっと歩いたときに見たオスの数は,せいぜい2,3頭という感じでしたから.

▲ふと足下を見ると小さな黄褐色のトンボが打水産卵をしていた.

▲打水の瞬間.

▲打水後の水紋が写っている.

▲近づいて目を凝らしてみると,タイリクアカネのメスだった.

私が近づくと微妙に距離をとって産卵を続けます.私の動きが気になるようです.そこで,じっと待つことにしました.私が身体の動きを止めると,安心したのか,近づいてきて産卵しました.幸いこの産卵中は日が差していましたので,トンボが明るく撮れました

▲こちらが動かなければ,かなり近づいてきた.

▲旋回している.

▲打水の瞬間.水をかなり深くなでている.

▲また向きを変えて....

▲打水の瞬間.

やがて,産卵を終えて,上空へと飛び去りました.タイリクアカネの単独産卵はあまり見ることはないのですが,やはり連結産卵も見ないと気が収まりません.少し移動して探すことにしました.少し歩くと,別の場所で,また単独産卵をしているメスに出会いました.やはりオスが少ないのかなぁ.

▲少し向こうで,別のメスがまた単独産卵をしていた.

▲今度は水に入って記録を撮ることにした.

▲足下にやって来て,私の周囲を回りながら打水する.

▲日陰から出て日向で産卵し始めた.

▲チョンチョン打水を続ける.

▲私の周囲をあちこち移動するので,目が回りそうであった.

▲今度は逆光の位置に入った.

こうやって写真を並べてみると,タイリクアカネのメスというのは,本当に地味な色彩のトンボです.一番上の静止の写真を見ると分かりますが,メスの淡色部は,微妙にオリーブ色が混じっているのです.このオリーブ色が濃いメスは,なかなか渋い色彩に見えるんですけど,今日はそういった個体には出会えませんでした.というか,タイリクアカネ自体が非常に少ないと言ってよい感じです.ここまでで,オス5頭,メス3頭を見ただけです.この公園には,今年はタイリクアカネがあまり集まっていないようです.

連結産卵は見られないかと諦めかけていたとき,連結産卵をやっているペアを見ました.しかし,時すでに遅しといった感じで,近づくまもなく,産卵を終えてメスは飛び去ってしまいました.まあ,証拠写真という程度で,最後にそれを載せておきます.

▲やっと連結産卵しているタイリクアカネのペアに出会えたのに....

そうこうしているうちに空がまた曇り始めました.今日はもう一つ二つ都市公園の池に行こうと思っていたのですが,ちょっと気持ちが萎えました.スカッとした秋晴れは,まだしばらく望めそうもないようです.