続 トンボ歳時記
No.573. オグマサナエの産卵観察叶わず.2018.4.28.

今日は一日,オグマサナエの産卵を観察することに賭けました.コサナエ属3種が生息する例の池に,早朝から押しかけ,また夕方にも押しかけ,なんとか1頭だけでも産卵個体を観察しようと頑張ってみました.でもだめな日は何をやってもだめって感じでした.やってきたのはフタスジサナエばかりで,タベサナエのメスの姿も見ることができませんでした.それでは今日の観察を記録しておきましょう.

昨日は北朝鮮と韓国の首脳会談のニュースがあって,それをテレビでじっと見ていたため,夜更かししました.そのせいで,観察地へは,昨日より遅い8:00に入りました.池の半分くらいに日が当たっていました.池に降りるとすぐにフタスジサナエのオスが入ってきました.このオス,産卵にやってくるだろうポイントに入ってきたので,いつもながら,オスはよく知っている,というか,私の見立てもオスといっしょだな,なんて考えながらまずは記録を撮りました.

▲当直と同時に姿を見せてくれたフタスジサナエのオス.まだ葉が露で濡れている.

このオスは淡色部の黄色がうすくなってきていて,成熟が進んでいますね.でも,まだまだ黄色のままで水辺に降りてくる個体もいます.また未熟なメスは,池近くの木の葉の上で休んでいます.フタスジサナエが多くなってきましたね.

▲体色が黄色の未熟な感じのフタスジサナエのオスだが,池に出てきて葉上に止まっている.

▲池のすぐ近くの低木の上で休む,やや未熟なフタスジサナエのメス.

さて,1時間が経ちました.日は池全体に当たるようになって,朝という感じがなくなってきました.気温もだんだんと上がってきました.最初待っていた場所を諦め,別のポイントに移動しました.この池で午前10時過ぎたあたりからよくメスが入るポイントです.フタスジサナエやタベサナエ,オグマサナエのオスもよくやってきます.

▲今日の産卵観察ポイント.奥まった所に砂泥の陸地がある.ここがポイント.

▲上記のポイントをにある低木に止まるフタスジサナエの成熟オス.

ここのポイントは,樹木で覆われた奥まった部分に砂泥がたまったところが水面から顔を出している部分があって,コサナエ属の産卵ポイントがあるのです.しかも木漏れ日差す日陰になっていて,気温が上がったころに,オスの目から逃れながら産卵ができる場所なのですね.実際今日も2頭のメスが産卵に入ってきました.ここタベサナエも産卵しそうな雰囲気があり,それが狙いでもあります.案の定タベサナエのオスがこの中に入り込んで,メスを待ちにやってきました.

▲タベサナエの産卵が行われそう来そうだと踏んでいた場所にきっちりとタベサナエのオスもやってきた.

▲まさに,産卵ポイントと思われる場所の真上に止まるタベサナエのオス.

時間はどんどん過ぎていきますが,何も産卵にやってきません.と,すぐ前にコサナエ属のメスの産卵!,9:50のことでした.やはりここは10時ころから産卵に来るポイントですね.ただ,このメスは日当たりの良い,草や低木の上で場所で産卵しています.このメス,フタスジサナエのメスでした.

▲フラスジサナエの産卵.こういった草や低木が雑然と生えているところで産卵する.

▲産卵するフタスジサナエ.

10:49,さらに次のメスが入ってきました.これは,例の奥まった砂泥の上で産卵をしています.残念ながらフタスジサナエでした.ただ,この写真,初めのうちストロボをつけ忘れていて,真っ黒.強引にソフトで明るくしてみましたが,なんか,絵画的な写真になってしまいました.後半はストロボをつけて撮りました.このメスこちらに頭を向けてばかりなので,それならとにらめっこ写真にしてみました.

▲真っ暗の写真を無理矢理明るさ調整してみた.

▲このメスはこちらばかり向かって産卵する.

▲ええい,にらめっこアングルだ,ということで,顔をアップにしてみました.

このあと,すぐにもう一頭メスが入りましたが,私が反応したときに,長靴で水を蹴ってしまい,このメスはすぐに逃げていってしまいました.彼らは水音に敏感です.多分カエルが捕食者だからでしょうね.なお種名は不明です.

▲池を離れて歩いてみると,成熟したシオカラトンボのメスが休んでいました.こいつも早い.

さて,太陽が高くなってきて,待っていてもいいのですが,狙いのオグマサナエは,以前夕方に産卵に来ていましたので,ここでいったんこの池を離れ,ホソミイトトンボやオツネントンボを探しに行くことにしました.目的の池ではホソミイトトンボらしいトンボは飛んでいましたが,繁殖活動はしていませんでした.かわりに,アジアイトトンボが産卵していました.同時に羽化個体や未熟個体も見られました.

▲アジアイトトンボが産卵をしていた.たいがい早いトンボですが,産卵しているとは….

▲クロイトトンボ系の未熟個体か? ぱっと見では分からない.

▲未熟なアジアイトトンボのメス.

さて,いったん家に帰って,夕方を待つことにしました.

二回目に例の池に入ったのは,16:30.池の入り口で,フタスジサナエのメスが出迎えてくれました.

▲道路にぺたんと止まるフタスジサナエのメス.

ここに来るだろうという産卵ポイントに入ると,そこにはきっちりと,タベサナエのオスやオグマサナエのオスが止まっていて,お互い「オス」どうし,狙いはいっしょだな,と写真を撮って,後は「邪魔しないでね」と,優しく退場してもらいました.

▲オグマサナエのオス.複眼が傷んでいる.

▲タベサナエのオス.これら2種,オスはよく見るが,メスの姿を見ないなぁ.

16:42,早速コサナエ属のメスが産卵に入ってきました.フタスジサナエでした.傾いた日を浴びての産卵.彼らは夕方が好きなのかなぁ.以前もたくさん夕方に産卵に来ていました.

▲フタスジサナエの産卵.草むらの上で産卵している.

▲産卵をするフタスジサナエのメス.これで今日は3例目.

結構長時間産卵をしてくれたので,たくさんの写真を撮りました.フタスジサナエの産卵は,停止飛翔して卵塊をつくった後,腹部を振って卵を撒くといった動作をします.その瞬間は撮れませんでしたが,その直前の写真が1コマだけうまく写っていました.赤い卵が生殖口の先に付いていて,今まさにばらまかれる瞬間です.腹部第10節が下方に屈曲せず伸びています.オグマサナエもタベサナエも,そしてコサナエも同様の産卵様式です.

▲腹部を振って卵をばらまく直前の体勢.オグマサナエとよく似た産卵様式である.

さて,その後,18:00まで待ちましたが,何も来ませんでした.そして帰ろうとしたときに,1頭のメスが慌ただしく入って,数回産卵動作をしてから逃げていきました.近づくこともままなりませんでした.ただ,淡色部が薄緑色になっていたので,フタスジサナエではないように見えましたが,逃がした獲物はなんとやらの想像でしょうね.

ということで,今日一日の活動を終えました.オグマサナエは,連休後半にもう一度チャレンジしてみます.