今日は朝からどんよりとした曇り.天気予報は,昼過ぎから晴れてくるとのこと.今日は夕方に私用があって,午前中のみの観察しかできないため,曇りの日にも産卵に来るかという無理矢理テーマで,オグマサナエやタベサナエの産卵を早朝から見に行きました.到着は7:16でした.
▲今日の空模様.どんよりとした雲の上で太陽がぼんやりと輝いている.回復基調ではあったが.
やってきたのはいいけれど,気温は7:16の到着時点で13℃でした.しばらく待っていてもまったくトンボの動きはありません.飛ぶのはガガンボだけ.待つこと2時間以上,少し肌に感じる空気に暖かさを感じ始めたときでした.シオヤトンボが1頭,舞い降りてきました.9:30のことです.ちなみに,ここを離れたのが11:05,気温が19℃でした.約4時間で6℃上昇していますので,リニアに気温が上昇したとすれば,16.5℃くらいですかね.
▲待つこと2時間以上,今日始めて見たトンボである.
そしてその後,9:48にオグマサナエのオスが舞い降りてきました.先と同じで考えると17℃を少し超えたあたりでしょうか.
▲オグマサナエのオス.オグマサナエのメスを見に来たのだが....
さて,オグマサナエやタベサナエは昨日の予備調査で十分成熟しており,もう産卵に来てもおかしくないという判断でやってきたのですが,結果的にこの2種は全く産卵に来ず,フタスジサナエが多分2個体,4回産卵にやってきました.フタスジサナエは4月20日ころにたくさんの羽化を見ていますので,早い目に羽化した個体であれば羽化後10日近くは経っているかもしれません.まあいずれにしても早い産卵ですね.そして今日もまだフタスジサナエの羽化殻は残っていましたけど.
▲全体が濡れているまだ比較的新しいフタスジサナエの羽化殻.
さて,2個体で4回というのはこういうことです.まず,最初に産卵に入ってきたのは9:31でした.上のシオヤトンボが入ってきたすぐ後です.ちょっと慌てて動きが大きすぎたせいか,シャッターを一回切っただけで,どこかへ逃げていってしまいました.かなり神経質な感じの個体でした.
▲産卵(1):9:31にやってきたメス.さっと入って,近づいたら,ビユーンと逃げた.
次に産卵に来たのが10:13.リニアに内挿した計算では17.5℃になります.この個体は,9:31の個体と同じところで産卵し,かつ,私が近づいていくと(もちろん慎重に!),一定の距離を置いて離れていくのです.神経質さが先の個体と似ています.
▲産卵(2):10:13の個体.岸に平行に向いて卵塊をつくり,岸に向きを変えて腹部を振り卵を飛ばす.
産卵(1).産卵(2)の写真の,体の黄色い斑紋,特に肩縫線上の黄色いスジの大きさと位置が同じです.ここは結構変異が多いのです.以前の観察でも,いったん産卵を中断した個体が,しばらく間を置いて再び産卵にやってきているのではないか,と感じていたのですが,どうもそういう感じが強いです.とくに,産卵(1)は私が脅ろかせたので産卵を中断して逃げたという前歴がありますから,このメス,まだ産卵は続けたかったはずです.でも産卵(1)の写真がピンボケの1枚しかありませんので,まだ確定的なことはいえません.
▲肩縫線上の黄色いスジがほぼ同じ形に見えるが,これではまだ確定はできない.
さて,そんなことを考えながら,またしばらく待ちました.次に産卵に入ってきたのは10:45,予想温度は18℃を超えています.今度はそれほど神経質な個体ではなく,かなり近づくことができ,けっこうシャッターを切ることができました.
▲産卵(3):10:45に来た個体.今度はかなり近寄らせてくれた.
▲産卵を中断して静止.この後私の気配を感じてか,すぐに飛び去った.
この個体も,産卵飛翔をいったん中断し静止したときに,近づこうとした私が足下をすくわれた動きによって飛び去ってしまいました.そして,わずか2分後の10:47に,再び1頭のメスが産卵に入ってきました.私は先に産卵に来たところに待ち伏せていましたので,目の前に産卵に入ってきたという形になりました.ほぼカメラの至近距離から撮影ができました.
▲産卵(4):10:47の個体.足下に入ったのでゆっくりとしゃがんで撮影できた.
▲途中で静止,その語飛び去った.
さて,後半の産卵(3),産卵(4)の2個体,今度はかなりの枚数が取れましたので,体の各所の黄色の斑紋の形を詳細に見比べましたが,差異が見つかりません.やはり同じ個体のような気がします.もっとも,産卵(1),産卵(2)の個体とは,肩縫線上の黄色いスジの太さがまったく違いますので,明らかに別個体です.
▲(1)(2)(3)黄色が途切れる部分が同じ,(4)左上の尖り方が同じ,(5)肩縫線上のスジが同じで,差異がない.
写真を撮っていて,1度産卵に来ると次々と産卵に入ってくるという,産卵が集中する印象が強いのですが,その中には,こういった,産卵中断個体の再来というのが含まれているかもしれませんね.
▲フタスジサナエのオス.やはりよくメスが産卵に来るところで待っている.いつもながら不思議である.
帰り間際,オスのフタスジサナエもやってきました.今日の収穫は,曇っていても気温がある程度あれば,メスは産卵にやってくるということ,そして,途中で産卵をやめた個体は同じ場所に帰ってくる場合がある,ということでした.