トンボ観察記
No.538. 真夏のトンボたち 最終回 その他のトンボ.2016.9.11.

今日は9月の11日.もはや「真夏のトンボたち」というのは,合わない季節になってしまいました.今日は,真夏のトンボたちの観察の合間に見た,その他のトンボたちをまとめて記録しておくことにします.まずはタイワンウチワヤンマ.1990年代の初めころから兵庫県で観察されるようになり,25年ほどたった今,完全に兵庫県のファウナの一員になってしまいました.最近は特にタイワンウチワヤンマを観察しようということがほとんどなく,いつもついでに見ているだけです.産卵もあまり見かけません.これも私にとって残された普通種の一つです.実はこの写真を撮った場所が産卵観察に適していたので,本気で観察に行こうと後日出かけていきましたら,水位が下がって,この場所は陸地状態になっていました.

0911-013▲タイワンウチワヤンマのオス.木漏れ日の射す日陰で縄張り活動をしている.

次はコシアキトンボ.コシアキトンボも,真夏のトンボですね.こちらは日陰をパトロールすることが多いので,過去にも結構観察しています.今年はコシアキトンボを観察しに出かける暇がありませんでした.タイワンウチワヤンマの隣で活動していました.

0911-014▲コシアキトンボオスどうしの闘争行動.

次はシオカラトンボ.シオカラトンボの繁殖活動が一番多くみられるのは秋口の今です.でも,タイワンウチワヤンマ同様,暑い日なたで活動する普通のトンボ,なかなか観察するには気合がいります.で,ついでの観察になってしまいます.コンクリート護岸でも産卵をしています.

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0911-012▲シオカラトンボの単独産卵.

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0911-016▲シオカラトンボの警護産卵.真ん中は警護するオス.

オオイトトンボのメスは,産卵時以外は周辺の樹林や草地に隠れています.ヤブヤンマを観察したとき,木漏れ日の日かげに止まっていました.

0911-003▲林の中の木漏れ日に止まるオオイトトンボのメス.

ホームページの改訂にあたって,セスジイトトンボのまともな写真がないことに気づき,どこにでもいるだろうという感じで探しに行きましたが,真夏には意外と見つかりません.やはりこれも夏の終わりころに再び数が増える感じがします.ムスジイトトンボも同じような感じです.

0911-002▲真夏の昼間,流れの中央でなわばりを形成するオス.

そして,いよいよオオルリボシヤンマの季節.先日のタカネトンボの観察の9月4日です.久しぶりに神戸市内の観察地を訪れ,観察しました.11時ころから観察を始めましたが,着いたときにメスが1頭,そして15時を過ぎてからもう1頭入ってきただけでした.この日は良く晴れていて,陽が射している間はオスのオオルリボシヤンマが飛ばないのですが,曇ってくると突然数頭のオスが出てきて縄張り活動を始めるといった具合に,どうも陽が射さない方が好きみたいです.小さな池ですので,縄張りは,オス1頭で満員.闘争行動のあと順位が決まると,負けた方のオスは少し高い木々の梢付近を周回飛翔しています.時々下がってきてなわばりオスと闘争行動が引き起こされますが,順位はそう簡単には覆らないようです.この日は3頭目のオスもいて,さらに高いところで周回飛翔していました.以前にやったことがあるのですが,一番池に近いところを飛んでいる順位1位のオスを取り除くと,すぐ上のオスが池に入ってくるのです.またこのあたりを記録に撮りたいものです.

0911-008▲弱弱しい飛び方をするオスが杭に止まった.

ちょっと弱っているのか,ふらふら飛ぶオスが,池の横の木の杭に止まりました(上の写真).さらに今日のオスは,いろいろと変わった行動を見せてくれました.それは時々止まるという行動です.オオルリボシヤンマのオスは飛び続けるのが普通ですが,今日は時々止まっていました.少し高くて池が見下ろせる位置に止まります.

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0911-006▲縄張り途中に静止するオス.毎回ほとんど同じ位置に止まる.

極めつけは,オオルリボシヤンマオスの自然死です.トンボの自然死はめったにお目にかかれません.落下するところは見逃してしまいましたが,さっきまで何もいなかったところに,遺体が転がっていました.目が青く,死んだ直後です.この個体,多分,先ほどふらふら飛んで杭に止まった個体だろうと思います.

0911-009▲珍しいオオルリボシヤンマの自然死個体.

そして次はオニヤンマ.オオルリボシヤンマの観察地は池ですので,これは単なる通過個体.杭の日陰部分に止まって一休みといったところでしょうか.すぐに飛んで行ってしまいました.

0911-005▲一休みするオニヤンマのオス.

いよいよ秋の到来を感じさせたのは,昨日9月10日,もう一度オオルリボシヤンマを観察に行ったときです.オオルリボシヤンマはだめでしたけれど,久しぶり,10年以上ぶりだと思います.神戸市内でルリボシヤンマを見ました.まだ生き残っているんですね.細々と世代をつないでいるのでしょう.これはちょっとしたニュースです.

0911-010▲久々の神戸市内での目撃,ルリボシヤンマのオス.

ということで,ルリボシヤンマが飛ぶようでは,夏のトンボも終わり.真夏のトンボシリーズはここまでです.最後に秋の終わりの方に見られるオオアオイトトンボの活動開始を告げる写真−移精行動−を紹介して,次回からは本格的に秋のトンボたちを紹介していきます.

0911-004▲ヒメコウホネの陰で移精行動を行うオオアオイトトンボ.