トンボ観察記
No.513. 春を待つヤゴたち.2016.4.10.

春がやってきました.うまく探せば越冬種の成虫なら見つけることができると思います.でももう間もなく成虫が羽化して,今シーズンのトンボが飛び始める時期に突入するはずです.今日はその直前の幼虫たちを観察に,兵庫県北部に出かけました.おもに川へ行って,サナエトンボの幼虫を中心に探してきました.

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▲キイロサナエの幼虫.まだ翅芽はほとんど膨らまず,春一番遅いサナエトンボらしい状態である.

まずはキイロサナエとヤマサナエ.キイロサナエは,まだ羽化までに1か月以上ありますから,「普通の」終齢幼虫状態で,翅芽が膨らんでいません.

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▲ヤマサナエの幼虫.キイロサナエに比べると翅芽が膨らみ始めているのが分かる.

対してヤマサナエは翅芽がやや膨らみ始めていて,羽化がそう遠くないことを示しています.

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▲ホンサナエの若齢幼虫.終齢幼虫を見つけることができなかったので,やはり数は少ないようである.

この場所にはホンサナエがいると確信していたのですが,大きな幼虫は採れず,若齢だけでした.でもここに生息していることは確認できましたので,今シーズンに成虫の観察に来る予定です.

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▲ダビドサナエの幼虫.本当にこの幼虫はどこでも採れる感じである.

川でサナエトンボの幼虫採集をするとだいたい網にかかってくるのがダビドサナエです.ダビドサナエの成虫を全く見ないようなところでも,こうやって幼虫はよく採集されます.これは幼虫が流されてきているのか,それともここに産卵に来ているのか,よく分かりません.ホンサナエやキイロサナエのいる川ですから,上流でよく見かけるダビドサナエのいそうな感じではありません.ダビドサナエはかなり早い時期に羽化しますから,翅芽はもう十分に膨らんでいました.

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▲オナガサナエの幼虫.レキ質の瀬に網を入れるとこの1頭だけだがオナガサナエが見つかった.

ちょっと違う環境をすくうと,なんと,オナガサナエが入りました.サナエトンボ6種類目です.川でサナエトンボがこれだけの種類採れたのは久しぶりです.

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▲コサナエの幼虫.翅芽の縞模様が見え,その中には成虫の翅ができているのが分かる.

次に池に行ってコサナエを採集しました.この地のコサナエはゴールデンウィークには産卵をしているので,もう羽化直前といってよいでしょう.あと10日もしないうちに羽化が始まると思います.翅芽が膨らみまもなくファレート状態になりそうです.ファレート状態というのは,成虫の体ができ,幼虫の表皮(クチクラ)の内側が消化されて,表皮と体が分離する現象です.

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▲シオヤトンボの幼虫.春一番のトンボ,準備は完了しているようである.

最後は,おそらく春いちばんに羽化してくるでしょう,シオヤトンボの幼虫です.シオヤトンボは,もう背中がはち切れそうなくらい翅芽が膨らんでいますね,2,3日中に羽化するでしょう.自宅で羽化を観察することになりそうです.

まだトンボ成虫の姿は見られませんが,水の中では着々とシーズンインに向けての準備が整っているようです.