アオハダトンボの羽化の自動インターバル撮影に何とか成功しました.目的は,「カワトンボ科の羽化は,初めは直立型の様相を呈し,後半は倒垂型の様相を呈する」という説を,この目で確かめることです.このことは,山本氏らの著書「近畿のトンボ図鑑(いかだ社)」の中にも明確に書かれており,私もそれ以前からこのように考えてました.
羽化は,午前2時過ぎから始まりました.それでは写真を紹介しましょう.
■1.定位から静止期まで(前半)
▲@定位:2:06,A脱皮開始:2:15,B脱皮進行:2:19,C静止期:2:31.
一番の注目点はまずここ,静止期です.静止期において,頭部や胸部が重力に逆らわずに鉛直下方に向かってだらんと下がるか,重力に逆らって,頭部を羽化殻の前方に向けたままになるかというところです.上の写真Cで明らかなように,これは直立型の姿勢になっています.腹部が細く上半身を力強く支えられないために,やや鉛直下方に頭部と胸部が下がり気味ですが,頭部はしっかりと前方を向いています.直立型か倒垂型かの定義は,この静止期の姿勢によってなされますので,これは明らかに直立型というべきでしょう.
■2.腹部の抜き取り
▲D腹部を抜こうとしている:2:43,E腹部が抜けた瞬間:2:44.
腹部を抜く瞬間はぜひ記録したいところです.ただ,1分間隔の自動撮影ですので,2コマだけで完了してしまいました.長い肢が邪魔になるのか,起きあがるのに6分ほどかかってしまいました.
これで完全脱皮にいたる前半の完了です.
■3.翅の伸張
▲翅の伸張.F2:51,G2:54,H2:57,I2:59.
さて,次は後半の翅の伸張です.「カワトンボ科は後半倒垂型の様相を呈する」というのは,この翅の伸張の様式が,倒垂型の「全体が広がるように伸びる」様式だということです.直立型のトンボは翅の基部から伸びていきます.写真の通り,特に基部からというのではなく,全体がほぼ一様に伸びていっているのが分かります.
■4.腹部の伸長
▲腹部の伸長.J3:34,K3:44,L3:58,M翅が色づき始める:4:30.
最後は腹部の伸長です.腹部は細いので,あまり細くなるという感じがありませんが,はっきりとと伸びています.
以上から,アオハダトンボに関しては,「初めは直立型の様相を呈し,後半は倒垂型の様相を呈する」ということが確かめられたと思います.