現地に着くと,やはり天気は思わしくありませんでしたが,とりあえず調査を始めました.
▲観察地の景観
現地について,川沿いに歩くと,アサヒナカワトンボとニホンカワトンボが同じ場所で縄張り行動をしていました.時には両種間で追尾行動も見られました.ニホンカワトンボは中流域に生息するというのが通説ですが,こんなヒメクロサナエのいるような源流域に,アサヒナカワトンボと一緒になって活動をしている姿を見ていると,この通説を疑いたくなります.現地では両種の個体数は拮抗しているような印象でした.
▲ニホンカワトンボ(左)とアサヒナカワトンボ(右)
さて,ねらいは,ヒメクロサナエやクロサナエです.目を凝らしてサナエトンボの姿を探しましたが,見つかりません.突然,何かが視野を横切ったかと思うと,それはムカシトンボでした.上の景観写真左側の,草地の上を低く飛んで摂食していました.捕獲しようかと思いましたが,写真に撮れる位置に止まりそうな行動を繰り返したので,止まるのを待ちました.結果的には,7,8mの高さの位置に止まり,写真撮影はおろか,採集も叶いませんでした.
▲処女飛行に飛び立った後止まったヒメクロサナエのメス.
そこで行動範囲を広げ,約2時間ほど,あたりの谷筋に次々と入り込み,たたき出したりしましたが,結局,羽化直後のヒメクロサナエ1頭に出会っただけでした.実は,ヒメクロサナエの写真を撮ったのはこれが初めてです.その他のトンボとしては,シオヤトンボがいたくらいでした.シオヤトンボはたくさん見ましたが,すべてメスでした.
▲ヒメクロサナエ幼虫(左),ミルンヤンマの幼虫(右)
そこで,最後の手段,いつもこれですが,幼虫で生息状態を確かめてみました.すると,ヒメクロサナエ幼虫が,一網毎に4,5頭程度入りました.サイズは小さく,来年の羽化個体群です.今年羽化するサイズのものはなく,今日処女飛行個体を見たこともあわせて考えると,きっとそこそこの数が羽化し終わっていると考えられます.未熟な個体は樹上生活をしているようなので,今日は見つからなかったのかもしれません.あと1,2週間で最盛期を迎えるのではないかと考えられます.
▲あと,オニヤンマも非常に個体数が多かった.(生態写真)
幼虫調査では,カジカが入りました.あまり網に入れたことのない魚なので思わず写真に撮ってしまいました.その他としてはオニヤンマとミルンヤンマ幼虫が採れました.
この時期,こういった源流域はトンボの姿が少なく,あまりおもしろくありません.昔はすぐにあきらめて,トンボがたくさんいる中流域や,池の方に回ってしまったような気がします.だから,自身のクロサナエとヒメクロサナエの観察・採集例が非常に少ないのだと思います.同時に県下における生態もあまり詳しく把握できていなくて,....まだまだ勉強しなければなりません.