トンボ歳時記
No.059. 帰りにヒヌマイトトンボなどを調査. 2009.5.16/2.

目的の幼虫が採集できたので,少し足を伸ばし,城崎の方にある湿地の状況と,ヒヌマイトトンボの生息地のようすを見に行ってきました.

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▲調査地の状況.一番奥にある沼.

かつてのこの湿地は,かなり広く,あちこちに水たまりがあり,一番奥はヨシが密生した沼になっていました.現在はヨシがなくなっており,写真のように泥と背丈の低い草本があるだけです.また手前の広い湿地は乾燥しており,水がありませんでした.

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▲ハラビロトンボ.色が変わりつつある未成熟なオス(上),オス(下左),メス(下右)

到着早々アオヤンマが1頭飛びました.あとは,シオカラトンボとハラビロトンボが見られただけです.山すそにある細流では,オオシオカラトンボの幼虫がたくさんいました.昔はネアカヨシヤンマやヤブヤンマ,タカネトンボなども採れたことがありますが,今日は他の種類のトンボはいませんでした.

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▲オオシオカラトンボ幼虫.シオカラトンボに似ているが背棘がある.


続いて,ヒヌマイトトンボの生息地を訪れてみました.

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▲ヒヌマイトトンボの生息地(兵庫県豊岡市).

この時期のヒヌマイトトンボは羽化直前の状態で,幼虫が見られるかどうかの調査予定でした.しかし,水位調節用の堰板がはずされていて,ヒヌマイトトンボ幼虫が生活しているヨシ群落のある部分が,水位低下によって完全に陸地化していました.

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▲堰が開けられ,幼虫が生息しているヨシ群落部(左側)が完全に陸地化している.

ヒヌマイトトンボ幼虫は,通常ヨシ群落の外へ出ることはないと考えられます.羽化直前の時期でもあり,水位低下による生息場所の陸地化は,かなりのダメージになるのではないかと思います.例年5月の下旬には羽化をし,6月には成虫が見られますが,今年の成虫調査は重要な意味があるでしょう.

とりあえず水のある部分をかんたんにすくってみましたが,幼虫は入りませんでした.なお成虫はセスジイトトンボのメスを1頭見ただけで,ヒヌマイトトンボはまだ羽化していなかったようです.