兵庫県の幼虫ガイド
H064. ハネビロエゾトンボ Somatochlora clavata
ハネビロエゾトンボ終齢幼虫
写真1.ハネビロエゾトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長は23mm前後.2011.5.28.
<特ちょう>
 ハネビロエゾトンボはトンボ型の幼虫です.翅芽(しが)はまっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)はやや太く長いです.体はやや固い感じです.腹部の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にありますが,いずれも小さいです.背中のとげ(背棘:はいきょく)第3−9節にあります.写真2のように,下唇(かしん)を引きのばして,下唇側片(かしんそくへん)を見ると,その上の側刺毛(そくしもう)の数はふつう7本で,腮刺毛(さいしもう)の数はふつう10−11本の間です.

ハネビロエゾトンボのかしん タカネトンボ,エゾトンボ,ハネビロエゾトンボのはいきょく
写真2.ハネビロエゾトンボの下唇
側刺毛の数はふつう7本,腮刺毛の数はふつう10−11本の間です. 
写真3.タカネトンボエゾトンボ,ハネビロエゾトンボの背棘の形.
第8,9節の背棘は,ハネビロエゾトンボが太く立ち上がっています.


<似た幼虫との区別>
 トラフトンボタカネトンボエゾトンボ,ハネビロエゾトンボは,いずれもとてもよく似ていて,区別が難しい幼虫です.この中で,トラフトンボについては,トラフトンボのページを見てください.
 残りの2種,エゾトンボタカネトンボとの区別は,とても難しいです.写真3のように,背棘の形で見分けるか,写真4のように,下唇を引きのばして,側刺毛腮刺毛の数で見分けるしかありません.幼虫を採った場所も参考になります.タカネトンボは池,エゾトンボは湿地(しっち),ハネビロエゾトンボは小さな川に,ふつう住んでいます(例外もあります).

エゾトンボ科4種のかしん
写真4.エゾトンボのなかま4種の,側刺毛の数,腮刺毛の数,下唇側片の先の切れこみの比かく.
トラフトンボ側刺毛:6本,腮刺毛:8−10本,下唇側片の先の切れこみ:深い.    
タカネトンボ側刺毛:9−10本,腮刺毛:14−16本,下唇側片の先の切れこみ:浅い. 
エゾトンボ側刺毛:8本,腮刺毛:10−12本,下唇側片の先の切れこみ:浅い.     
ハネビロエゾトンボ:側刺毛:7本,腮刺毛:10−11本,下唇側片の先の切れこみ:浅い .
<さがす場所のヒント>
 ハネビロエゾトンボは川の住人です.とくにうす暗い林の中を流れる小さな川が好みです.湿地の中の流れにもいます.写真5のように,小石がごろごろしているような流れでよく見つかります.水がなくなってもかなり生きのびることができるようで,1か月くらい水がない時期があっても,次の年羽化(うか)してきます.幼虫は一年中採れますが,終齢幼虫は,ふつう5,6月にしか採れません.

ハネビロエゾトンボの産卵場所.
写真5.産卵にやって来たメス.石がごろごろした浅い流れで産卵します.