兵庫県の幼虫ガイド
H061. トラフトンボ Epitheca marginata
トラフトンボ終齢幼虫
写真1.トラフトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長は22mm前後.2008.4.20.
<特ちょう>
 トラフトンボはトンボ型の幼虫です.翅芽(しが)はまっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.体はやや固い感じです.腹部の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にありますが,いずれも小さいです.背中のとげ(背棘:はいきょく)第2−9節にあります.写真2のように,頭の上に小さな突起(とっき)があります.写真3のように,下唇(かしん)を引きのばして,下唇側片(かしんそくへん)を見ると,その先が大きな波の形をしています.また下唇側片の上の側刺毛(そくしもう)の数はふつう6本で,腮刺毛(さいしもう)の数はふつう8−10本の間です.

トラフトンボのちいさなようちゅう トラフトンボのしゅうれいようちゅう
写真2.頭の上に小さな突起があります.
 
写真3.下唇側片の形.先が波形をしています.
側刺毛の数はふつう6本,腮刺毛の数はふつう8−10本の間です. 


<似た幼虫との区別>
 トラフトンボ,タカネトンボエゾトンボハネビロエゾトンボは,いずれもとてもよく似ていて,区別が難しい幼虫です.この中で,トラフトンボについては,ほかの3種より見分けやすくなっています.それは,まず,写真2のように,頭の上に小さな突起があることです.ほかの3種にはありません.そのほかには,下唇側片の先の波形の切れこみが,トラフトンボでは大きく深くなっていますが,ほかの3種では,トラフトンボより小さく浅いです.側刺毛の数は,トラフトンボでふつう6本ですが,ほかの3種は7本以上あります.さらに,背棘が,トラフトンボでは腹部の第2−9節にありますが,ほかの3種では腹部の第3−9節にあります.これらのことをていねいに調べれば,見分けることができるでしょう.

エゾトンボ科4種のかしん
写真4.エゾトンボのなかま4種の,側刺毛の数,腮刺毛の数,下唇側片の先の切れこみの比かく.
トラフトンボ:側刺毛:6本,腮刺毛:8−10本,下唇側片の先の切れこみ:深い.    
タカネトンボ側刺毛:9−10本,腮刺毛:14−16本,下唇側片の先の切れこみ:浅い. 
エゾトンボ側刺毛:8本,腮刺毛:10−12本,下唇側片の先の切れこみ:浅い.     
ハネビロエゾトンボ側刺毛:7本,腮刺毛:10−11本,下唇側片の先の切れこみ:浅い .
<さがす場所のヒント>
 トラフトンボは池の住人です.卵はふつうのトンボの卵とちがっていて,カエルの卵のようにひものような形をしたかたまりです.水中の植物の葉や茎(くき)にからみつくように,産みつけられます.ところが,トラフトンボは春早くに現れるトンボで,そのころ,池の植物は,やっと芽や葉を出したところです.ですから,前の年にかれた葉や茎がしずんでいるようなところで産卵します.やがて,暖かくなって,植物がしげってくると,その中にもぐりこんで生活するようになります.終齢幼虫は,秋から冬の終わりにかけて採れます.

トラフトンボの産卵場所.
写真5.メスを待つオス.春早く,池の植物が葉を開きかけたころ,オスはその上を飛んでメスを待ります.
卵は,水面から,水中のかれた葉などにからみつけるようにして,産みつけられます.