H061. トラフトンボ Epitheca marginata
<特ちょう>
トラフトンボはトンボ型の幼虫です.
翅芽(しが)はまっすぐ後ろにのびています.
触角(しょっかく)は糸のように細いです.体はやや固い感じです.腹部の横のとげ(
側棘:そっきょく)は第8,9節にありますが,いずれも小さいです.背中のとげ(
背棘:はいきょく)第2−9節にあります.写真2のように,頭の上に小さな突起(とっき)があります.写真3のように,
下唇(かしん)を引きのばして,
下唇側片(かしんそくへん)を見ると,その先が大きな波の形をしています.また
下唇側片の上の
側刺毛(そくしもう)の数はふつう6本で,
腮刺毛(さいしもう)の数はふつう8−10本の間です.
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写真2.頭の上に小さな突起があります. |
写真3.下唇側片の形.先が波形をしています. 側刺毛の数はふつう6本,腮刺毛の数はふつう8−10本の間です. |
<似た幼虫との区別>
トラフトンボ,
タカネトンボ,
エゾトンボ,
ハネビロエゾトンボは,いずれもとてもよく似ていて,区別が難しい幼虫です.この中で,トラフトンボについては,ほかの3種より見分けやすくなっています.それは,まず,写真2のように,頭の上に小さな突起があることです.ほかの3種にはありません.そのほかには,
下唇側片の先の波形の切れこみが,トラフトンボでは大きく深くなっていますが,ほかの3種では,トラフトンボより小さく浅いです.
側刺毛の数は,トラフトンボでふつう6本ですが,ほかの3種は7本以上あります.さらに,
背棘が,トラフトンボでは腹部の第2−9節にありますが,ほかの3種では腹部の第3−9節にあります.これらのことをていねいに調べれば,見分けることができるでしょう.
<さがす場所のヒント>
トラフトンボは池の住人です.卵はふつうのトンボの卵とちがっていて,カエルの卵のようにひものような形をしたかたまりです.水中の植物の葉や茎(くき)にからみつくように,産みつけられます.ところが,トラフトンボは春早くに現れるトンボで,そのころ,池の植物は,やっと芽や葉を出したところです.ですから,前の年にかれた葉や茎がしずんでいるようなところで産卵します.やがて,暖かくなって,植物がしげってくると,その中にもぐりこんで生活するようになります.
終齢幼虫は,秋から冬の終わりにかけて採れます.
写真5.メスを待つオス.春早く,池の植物が葉を開きかけたころ,オスはその上を飛んでメスを待ります.
卵は,水面から,水中のかれた葉などにからみつけるようにして,産みつけられます.