トップ写真の解説
ヒメサナエはどこでも見られるというサナエトンボではありません.生息環境は,河川の上流域という以外特徴的なものはありません.何か歴史的な背景があって分布が制限されているように思えます.この場所はそんな中で,比較的個体数が多いところです.観察に出かけると,必ず2,3頭は産卵に入るメスを見ることができます.産卵は,ホバリングして卵塊をつくり,打水して放卵する様式です.写真には腹端に卵塊が見えています.
腹端の卵塊を間もなく打水して抱卵するメス.2013.7.6.
成虫
成虫は,兵庫県では5月下旬に羽化し,初夏を中心にその姿が見られます.産卵は,水面上でホバリングしながら卵塊をつくり,打水して放卵するタイプですが,ときどき静止し,そこで卵塊をつくっている場合もあります.また,高速で水面ギリギリのところを飛んで,連続打水するような産卵を見ることもあります.オスはよく腹部挙上姿勢をとります.
オスの静止.2010.7.18.
幼虫
幼虫は,レキ底で比較的流れの速いところにいます.かなりの上流部から中流域に至るまで幼虫は採れます.オナガサナエなどと一緒に網にはいることもあります.写真の幼虫は薄い緑色をしている珍しいものですが,普通は黒っぽい褐色をしています.幼虫はあまり採れないので,幼虫期間についてはよく分かりません.幼虫が流れを流下して,中・下流部で羽化し,上流部へ戻るという報告があります.
スタジオ写真.2011.6.12.