トップ写真の解説
早春の池は,成虫越冬性トンボの産卵から始まります.しかし,毎年同じトンボが同じように同じ池で見られることはなく,結構年変動が大きいのです.この年は成虫越冬種の大当たりの年で,ホソミイトトンボのほかに,オツネントンボもたくさん産卵にやってきていました.いつもそう思うのですが,個体数が多いとトンボは大胆になります.いわゆるグループ産卵は,他の個体が産卵しているから安全な場所であるという考え方があって,それゆえ大胆にもなるのかも知れません.この日はいろいろなパフォーマンスを見せてくれて,潜水産卵まで行われていました.
越冬世代の連結植物内産卵.2012.4.21.
成虫
ホソミイトトンボは早春に産卵を終えた後,いったん数を減らし,6月頃再び数が増えてきます.そのときの個体はやや小さく,色も緑色がかって見えます.これが夏世代といわれる個体で,越冬世代の次の子孫として生まれてきます.夏世代は盛夏の頃には数が減り,秋にその次の越冬世代がまた出てきます.まだ十分解明されているとはいえませんが,おそらく,一年二化しているものと思われます.
夏世代の連結植物内産卵.2016.7.31.
幼虫
越冬世代が産み落とした卵から育った幼虫は6月中−下旬に採れます.尾鰓など,アオモンイトトンボ属幼虫に似ていますが非常に小さいのが特徴です.生きた幼虫では腹部腹面の各腹節前縁中央に小さな黒点が出るので,本種であると判別できます.夏世代が産み落とした卵から育った幼虫については,まだ採集したことがありません.
スタジオ写真.2011.6.25.