兵庫県の幼虫ガイド
H013. キイトトンボ Ceriagrion melanurum
キイトトンボ終齢幼虫
写真1.キイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長20mm前後.2010.5.15.
<特ちょう>
 キイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.背中から見ると,写真2のように,頭から腹部の先にかけて,体がだんだんと細くなっていくような形をしています.ずんぐりした感じです.写真2のように,尾さいの先はまるく,はば広く,短く感じられます.写真1の幼虫は黒っぽい色をしていますが,明るい色をしたものもいます.下唇を引きのばして,腮刺毛(さいしもう)を見ると,たった1本しかありません(写真3).これはキイトトンボのなかまの大きな特ちょうです.

キイトトンボの背面図と尾さい キイトトンボの下唇
写真2.キイトトンボの背面図尾さい(側さい)
頭から腹部の先にかけてだんだんと細くなる全形.
ギザギザのある固い部分の長さは尾さいの全長の半分以上.
写真3.キイトトンボの下唇.腮刺毛は1本しかない.

 


<よく似た幼虫との区別>
 写真4のように,キイトトンボは,ベニイトトンボととてもよく似ています.ほとんど区別ができません.写真5のように,尾さいの形のちがいで区別できるときもあります.写真5のように,キイトトンボでは,尾さいのギザギザのある固い部分の長さが,尾さいの全長の半分をはるかにこえる長さがありますが,ベニイトトンボでは,およそ半分ほどの長さです.しかし,ちぎれて再生した尾さいでは,この通りになりません.また,これでは区別できないと書いている本もあります.ベニイトトンボ幼虫は,羽化が近くなると,背中が赤く色づくことがあります.キイトトンボでは,そういうことはありません.ただ,兵庫県では,ベニイトトンボが見られる場所は,とても限られています.ベニイトトンボの成虫が見られないところでは,キイトトンボと考えていいでしょう.

キイトトンボとベニイトトンボの全体図 キイトトンボとベニイトトンボの尾さいの比かく
写真4.キイトトンボとベニイトトンボの幼虫の全体図の比かく.
 
写真5.キイトトンボとベニイトトンボ尾さい(側さい)の比かく.
ギザギザのある固い部分の長さと尾さいの全長の比かく


<さがす場所のヒント>
 キイトトンボは池の住人です.水生植物が多くしげっている池に見られます.湿地(しっち)を飛んでいることもあります.成虫は初夏から夏に現れます.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,終齢幼虫を採るなら,4,5月が適しています.幼虫は,池の底につもった落ち葉の下などにもぐりこんで生活しています.

キイトトンボの産卵場所.
写真6.池で,水面にうかぶ葉に産卵している,オス・メスのペア.