H014. ベニイトトンボ Ceriagrion nipponicum
<特ちょう>
ベニイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.背中から見ると,写真2のように,頭から腹部の先にかけて,体がだんだんと細くなっていくような形をしています.ずんぐりした感じです.写真2のように,
尾さいの先はまるく,はば広く,短く感じられます.写真1の幼虫は明るい色をしていますが,黒っぽい色をしたものもいます.
下唇を引きのばして,
腮刺毛(さいしもう)を見ると,たった1本しかありません(写真3).これはベニイトトンボのなかまの大きな特ちょうです.ベニイトトンボの幼虫は,羽化が近くなると,背中が赤く色づくものがいます.写真1の個体も,翅芽や頭が,少し赤く色づきはじめています.
 |
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写真2.ベニイトトンボの背面図と尾さい |
写真3.ベニイトトンボの下唇 |
<よく似た幼虫との区別>
写真4のように,ベニイトトンボは,
キイトトンボととてもよく似ています.ほとんど区別ができません.写真5のように,
キイトトンボでは,
尾さいのギザギザのある固い部分の長さが,尾さいの全長の半分をはるかにこえる長さがありますが,ベニイトトンボでは,およそ半分ほどの長さです.しかし,ちぎれて再生した
尾さいでは,この通りになりません.また,これでは区別できないと書いている本もあります.ベニイトトンボ幼虫は,羽化が近くなると,背中が赤く色づくことがあります.
キイトトンボでは,そういうことはありません.ただ,兵庫県では,ベニイトトンボが見られる場所は,とても限られています.ベニイトトンボの成虫が見られないところでは,
キイトトンボと考えていいでしょう.
<さがす場所のヒント>
ベニイトトンボは池の住人です.水生植物が多くしげっている池に見られます.成虫は初夏から夏に現れます.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,
終齢幼虫を採るなら,4,5月が適しています.幼虫は,池の底につもった落ち葉の下などにもぐりこんで生活しています.
写真6.池で,水面に出てきているモに産卵している,オス・メスのペア.